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・女性向け二次創作サイト・「フルメタル・パニック!」宗介×かなめを取り扱っております・二次創作物、ノーマルカップリングの苦手な方、15才未満の方、荒らしさんはご遠慮下さい
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 以下のペ-ジで反転を必要とする表示のものは年齢制限作品(いわゆる18禁)です。

・18才未満の方の閲覧はご遠慮下さい。
・気分を害する恐れのあるときは、速攻でお帰り下さい。
・ウソ八百書いてますので本気にされると困ります。
・学校、図書館、職場など公共の場所、個人ブースのないネットカフェなどでの閲覧はご遠慮下さい。
・意図的に原作の設定を変更・無視している場合もあります。
・実在の人物・団体とはいっさい関係ございません。
・キャラクターはキャラクターであって生身の人類ではありません。
・必ずしもご覧の方のお好みに合うとは限りません。
・ファンタジーです。
・フィクションです。
・妄想です。
・18禁描写の全てが激しいわけではありません。
・18禁だからといって格別面白いとも限りません。
・ご感想は拍手およびメールでお願いいたします。内容によりましてはお返事いたしかねることもございます。 掲示板に書かれた場合、削除対象と致します。ご了承下さい。
・冗談の解る方、歓迎です。

 言うほど大した内容でもありませんが念のため。
 納得できた方のみ閲覧いただけますと幸いです。
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 …あたし、なんでこんなところにいるんだろう。
 千鳥かなめは白い豪華なドレッサー前のスツールに腰かけてドライヤーで髪を乾かしながら、もう一度部屋を見わたす。
 ベージュと白を基調とした落ち着いたインテリアのホテルの一室、高級ホテルのようであるけれど明らかに違和感を感じるのは部屋のド真ん中に、大きなダブルベッドがいかにも主役ですと言わんばかりに鎮座ましましているところだろうか。二つ並べて置いてある大きな枕の側に、かわいらしいかごに入った化粧品サンプルっぽいけど化粧品じゃないっぽい小さなパックと、用途の読めないというか読みたくない気がするなまなましい人体の一部っぽい形のものは…今のうちに見ておいた方がいいものだろうか。あれをおもちゃと形容出来るセンスには今のところ寛容さしか感じない。どうもどこかがマヒしてるみたいだ。
 ベッドがメインならあっちはおかずってところなのかしら、とおっさんくさい語彙をフル活用でちらりと伺いつつもすぐに目をそらした場所は、何故か壁が透けて覗ける仕様のバスルームで、いちおう湯気で中ははっきりとは見えないけれども、背姿くらいはうかがえたりする。
 うわあ…。
 なんていうか、いたたまれない。ソースケの見た目がどうとかじゃなく。どっちかっていうと痩せマッチョとかそういう、みっともなくない方の体型だから、よけいに。
 しかたなく手持ちぶさたにいくつかあるリモコンの説明を見たら、あの壁が濃い曇りガラスなみになる事も、こちらから見たらただの壁兼巨大スクリーンになる事も書いてあったけど、今さらだ。
 まー二人で映画見とくって手もあるけど、ここで実験したらキレイに映らないかもだし、こういうとこで見るよーなもんって、こー…大人のアレ的なナニっていうか別に今そんな見たくもないっていうかさあ…。
 あたしは、後ろ向いててよね、って言ったし。時々振り向いて見ても、ソースケはちゃんと後ろ向いたままじっとしてたし。
 あーもーなんじゃこりゃ、とかなめは白いバスローブを着たまま生乾きの頭を抱えるも、いい解決法が浮かばない。こういう方向にウィスパードの能力はまるっきり役に立たない。知ってるウィスパードを見る限り、むしろそういう能力に欠けてるメンツの方が多い気がする。
 これってあたしが誘った、ってことになるのかな。
 もういっそ明日の朝まで寝て…たいけどそれじゃマズいのかな。そもそも寝られる自信なんてない。ソースケがうとうとしてたりするとこは見たことあるけど、ものすごく熟睡してるとこなんて見たことないし、…いっつも何かしら気にしてて寝るにしても物音がしたらすぐに起きるし。
 そんなのが隣にいて下着もつけてないバスローブ一枚のこの格好で寝てられるのかっていうか、…以前は「もしかしたらコイツも男だし襲われるかも!」なんて思ってたけど、今は逆で、襲うだとかは、絶対ないのはわかってる。  
 でもやっぱそーいう雰囲気になったら、そういうこと、しちゃうのかもしんないし、そもそもソースケがあたしとそういうことをしたいのかどうかもわかんないし。
 あたしが「しよう」って言ったらしようとは、するんだろう。あいつがやり方を知ってるかどうかは、ともかく。あたしだって…詳しくは知らないけど。
 「約束したから」って学校のみんなの前でキスしたくらいだし。あいつにとってはあの情況でああいうことするのは、たぶん、命がけだったろうとは、思う。
 こういうことぐちゃぐちゃ考えちゃうのってコレのせいなのかな、電磁波って人体にそれなりに影響あるし。
 と、かなめは携帯電話の形をした小さな装置を見つめる。他にも色んなタイプを作ってあるが、これは携帯電話そのものの機能を利用して都会に発生しやすい電磁波同士の干渉を利用した、各種の感知器から身を隠すための装置だ。
 ささやくものが居なくなってもウィスパードの知識はやっぱりなくならなかった。ラジオ局が倒産しても受信機や機材は残るのと同じ、ということだろう。
 かなめは今後この世界のテクノロジーを戦争方面から影響を少なくする方向に持って行くために、テッサやミラと話し合ったことを実験しながらあちこちを転々としてるところだった。宗介はかなめの護衛兼サポート役である。
 それがなぜこの情況なのかというと、都内に無数に空いた虫食いのように存在する利用可能なポイントを本屋で買った地図と重ね合わせると、都合のいいことに大きめのポイントの位置にウィークリーマンションが建っていて、実験と行方くらましを兼ねて滞在を決め実際に訪れてみたら、建物はごく最近オサレなラブホテルに改装されていた、という次第である。
 宿泊が可能なだけマシといえなくもないし、折悪しく吹きすさぶ風雨によって二人ともずぶ濡れのありさまで、しょうがなく一夜の宿をここに求めざるを得なかった。同じ理由の先客が多いらしく、値段の高い部屋しか開いてなかったが、いかにもな雰囲気ではないだけ心理的負担は軽くなったような、そうでもないような。
 迷っていると余計めまいがしてきそうで、何より寒かったかなめは、一度似たシステムの建物を利用したこともあり、必要以上にテキパキと手続きを済ませてしまった。
 部屋の中の安全確認を済ませた宗介は先にかなめに体を温めるよう言った他は、特に何も言及しなかったので、かなめは彼がこのテの施設については何も分からないのだろうと勝手に思って安堵していたのだけれど。
「あ、クリーニングサービスとかあるんだ」
「わかっているだろうが、そういったものの使用は控えてくれ」
「あー、ハイハイお風呂ですすいで部屋干しよね…フロントでアイロン借りるのもだめなんでしょ、どうせ」
「無論だ」
「んじゃこのお菓子の自販機は…って、なにコレ」
 ポッキーかと思ったらゴムですか。ホホウ。…かんべんしてください。
 思わず目を泳がせるかなめに、おそらくは危機管理のためにわざわざ一つ購入して中味を確認した宗介が淡々と述べる。
「以前はこれを水筒だと思っていた。実際にそういった用途での使用も可能だ」
「へー」
 ソースケらしいわね、と気を抜いていたら、きっちり地雷が埋まっていた。
「今は本来の使用法も知っているぞ」
「…へ、へー…」
 かなめは入室の際、テキパキしすぎた自分をどつきたい気分になった。てか教えろよ未来のあたし。ソフィアがここにいる以上、ムリなのかもしんないけど。つーかソフィアどこ行った。
 うっすらと気配がしている間は半分自分に溶け込んでいるせいか気安くウザがってやっていた憑依人物は、少し前からどこに沈んだものやらぜんぜん出てこない。隠れているのとも何か違うような。まさかこの電磁波装置のせいだったりしないわよね。それはともかく。 
 ソースケはつまり、この部屋の本来の用途もご承知、ってことなんだろう。普段ならこういう珍しい入り方するようなとこだと質問攻めにされるのが、何にも言わない。
 あたしだけ入り方が分かってるの見てて、誰と入ったのか、なんてのも聞かない。てことは、だ。
 …こいつあたしのこと、そーいう軽い女だと思ってたわけだし、こいつにだって経験があるとかないとか聞いてないし、下手したらテッサともしちゃってるかもだし。
 愛してるって言いあったけど、あたしたち、そういう信用はないのよね…。
 そのわりに、こないだまでこもってた部屋じゃ、なーんにも起こらなかったけど、とかなめは宗介が無造作に置いて行ったラテックス製避妊具のパッケージを爪先でつつく。
 かなめたちが先日までいた場所では家具は備え付けだったが布団が一組のみ、寒い時期にもかかわらず暖房が効きづらく、持ち込んだ荷物に寝袋もなかった。
 やることの特になくなってしまったかなめは、天井を見上げて寝転がる。シーツは清潔な匂いがするし、寝心地も悪くない。この間までの二人で布団一組生活よりはっきりいって楽である。
 まあ、一回だけキスは、した。したっちゃした、程度に。
 何もないとこで寝ることに慣れてるソースケがあたしにお布団を譲るんだろーなとは思ったから、しょうがなくてひっついて寝てたけど、三日間特に何もしてない。狭くてぎゅうぎゅうしてただけだ。
 そもそも三日間もソースケと閉じこもって二人っきり、だなんてやったことなかったから妙に緊張するし、やっぱ外に買い出しに出られた方がいいよね、じゃあ移動型の軽い装置も作ろうかって話になって、手持ちの材料や道具でもできる新しい機材を設計して作ってたら、時間はわりとすぐに過ぎた。
 そんで「これで明日は外に出られるわね、じゃあおやすみ」って、キスした。あたしから。ソースケの鼻の頭に。寝不足でハイになってたんだと思う。
 …まー、なんだかそのあとソースケが何か言いたそうにはしてた気がするけど、あたしはともかく眠かったから寝たし。あたしが徹夜してる間はソースケも徹夜だったし、人間寝られる時は寝ないとだし。二晩も徹夜したんだから眠いわよね、しかも布団一組だし。いっそ交互に寝たらよかったかもしんない。
 で、テッサたちに連絡するときにソースケが「二人とも無事だが寝不足だ」とかなんとか言わなくていいことまでボソっと言うもんだから、テッサは誤解してむくれるしアルは祝辞がどうたら言い出すしマオさんもクルツくんも妙に含みのある話し方するし。あとでソースケはハリセンでしばきまくってやったけど、ものすごく、何にも言わなかった。普段からあんまししゃべらないけど、痛いくらいは言うのに。
 あれからキスもしてない。特に向こうからもしてこないし。だいたい約束を果たしたあともソースケは、まだあたしとキスしたいんだろうか。
 キスして抱きしめあうのは気持ちよかったし、ソースケのことは大好きだし、ソースケもたぶんあたしと同じ意味か違う意味かはわからないけど、命がけになってくれるくらいには大事に思っててくれてるのは、もうわかってる。
 だったらキスから先は、なくてもいいのかも知れない。そもそもキスから先、っていうけど本当にキスの延長上にあることなのかとも思う。キスしなくても、できることはできるんだし。
 それにだいたいあたしは、ソースケと、そういうこと、したいんだろうか。
 してもしなくてもどっちでもいい気も、する。
 ただ、したら赤ちゃんのできるようなことなんだから、もし赤ちゃんができて家族になって、とか、そうなったら一緒に暮らすんだろうとかはあるけど、今そうなっても情況のハードなおままごとみたいにしかならないような気がする。
 年はたぶん関係ない。あたしの年で結婚してる子ももういるし、二人とももう学生じゃない。
 でも、このままそういうことをしないでまた離ればなれになったら嫌だとか、そんなふうに焦りでするのもおかしい気がする。
 んあー、とバスローブのすそが乱れるのもおかまいなしにごろごろしつつ、かなめがなんとなーく目をそらしている間にシャワーを終えて出て来た宗介はきびきびと体をふき機材の情況を確かめると、唐突に言った。
「キスしよう、千鳥」
「へ?い、いま?」
 あわてて起き上がったかなめを極力見ないようにしつつ、宗介は短く尋ねる。
「いやか」
「そんなことない…けど。な、なんでいきなり」
「いきなりではないぞ」
「そ、そーなの?」

 上目づかいで彼を見上げているかなめのバスローブの胸元と短いすそをちら、と見やった彼がこめかみをぽりぽりかきながらきまり悪げに目をそらして、彼女はあわてて胸元をかき合わせる。転げ回っていたのがまずかったらしく、かなりヤバい状態だった。
 以前ならこの状態でもなんの反応も見せない彼にイラっとしていたはずなのに、よもやよりによってあのソースケ相手に、こんな行動を取る日がこようとは。
 困る。
 嬉しいとかどうとかいう前に、困る。足を見られるくらいなら別にいい。けど、具体的になんですか、その。
 あんたひっついて寝てたとき何も言わなかったわよねとか、…そういうのいつからなのよとか、メリダ島ですっごいぴったりしたスーツ着てたんですけどアタシとか、頭の中がぐるぐるしたかなめは顔がほてってくるのを感じて、よけいに焦る。
 お、おおおおおおちつけあたし。いや無理だ。いっそ無理無理無理無理ィとかいって逃げ出したい。それで色気のカケラもないことに呆れてあきらめて欲しい。一緒に暮らすくらいなら何とかなるけど、ソースケは大好きだけど、あたしにソースケとそういうことは、
「こちらの方が先日の場所より安全だと判断した」
「そ、そっか」
 あ、なんだ。ソースケだ。と一息ついたのもつかの間。
「…君の、許可があれば、のことなのだが。キス、だけではなくてだな。…あー。…君の」
 いたたまれなさの度が過ぎて、かなめはベッドの上で後じさりしながら、あわあわとソースケの言葉を遮った。
「あ、うん、わかった。言わなくていい。も、わかったからっ」
「言わなくていいのか?」
 ストップストップと手をふられ不満げな顔をしかけた宗介は、かなめの姿を見ているうちにだらだらと汗をかき始め、斜め上をにらみ上げる。
「やはり、その。こういう事はきちんと言うべきだと思うのだが」
「べ、べきとかならホント言わなくていいからね!」
 ていうかソレ聞いたらあたし逃げられないんですけど聞きたいけど聞きたくない。わかってこの複雑なオトメゴコロ。できれば自分でも封印したい。
「すまん、語彙に不備があった。聞いてくれ、頼む」
 あくまで真摯な宗介の態度に、かなめはう、と沈黙した。何だかんだ言って根は真面目な委員長気質の彼女である、真っ正面から下手に来られると逃げ場がない。
「愛してる、かなめ。君を抱きたい」
 石になったかと言わんばかりに固まっている彼女に、宗介はどこまでも真剣に相対した。
「…許可が、欲しいのだが」
「へ?あ、えっと、…はい。ど、どーぞ?」
 ぎくしゃくと隣を示して妙な愛想笑いを浮かべたかなめは、ソースケどうして引かないんだろうと真っ白になった頭の片隅で疑問に思う。
 今までのこととか約束とかで引っ込みつかないだけってんなら、どういう奇行に走ればこの場から逃げられるんだろう。ケンカとか勝負とか外道とかなら真っ向からやり合う。けど、こういうのは。
「へ、ヘンなことしたらひっぱたくからね」
「…そうか」
 この場合のヘンとはなんなのか、とソースケが聞いてくれたらなー時間切れまで説明しまくるんだけどーというかなめの淡い願いはばっさり断たれ、宗介は無言でかなめの体に腕を回し、ほっそりとしたおとがいに手を添える。きれいだ美人だという誉れ高き彼の想い人の内側で起こっている大混乱などおかまいなしだった。
 ぎゅっと目を閉じたかなめの唇に、何度か宗介の唇がふれた。
 押しつけるでもなく、儀礼的でもなく、不器用なりにせいいっぱい愛おしもうとしているのが分かってしまう力加減で、かなめは息ができなくなる。
 宗介の腕をつかんだ手が細かくふるえるのを人ごとのように感じながら、彼女はやっとのことで息をついだが、まだ先があった。  
 なんか、…前したのと違うんだけど。
 ちょっとまて今のは舌か。
「や、そーすけ」
 どういう風になってて腕が抜けないんだろう、とかなめはあわてて顔をそらし、うつむいた。
「ま、待って。ちょっと待って」
「…いやだ」
 もう待ちたくない、と抱きしめられて、なんでこいつこんなにストレートなんだろう、とツンデレ委員長気質の少女は泣きたくなる。
「……うん、そーだよね」
「すまん」
「ずるいよソースケ」 
 痛いのあたしの方なんだからね、と冗談めかして言ってやると、彼は辛そうに目を伏せた。
 こういうやつなんだよなあ、あたしの方が上に乗って襲っちゃえば、こんなにいたたまれなくなかったのかもしれないけど、…それも無理だった。
「やはり、無理ならやめてもいいぞ」
「ちょっと怖かっただけだし。もう平気」
「そうか。…続けるぞ」
「…ん」
 仕切り直しみたいにキスをして、だんだん深さが増してくる。
 予行演習でもしてきたの、と聞いてやりたくてもうまくしゃべれそうにないからやめてしまう。
 体のいたるところを辿るように手のひらにさすられる。あんたあたしのこんなとこさわりたかったの、と言いたくなるくらい丁寧で、あんまり、まんべんなく、なかった。
 あーやっぱりそういうとこ重点的なんだ…と思っていたら、これはフェチってやつなんだろうかという目にあわされた。なぜ末端。そりゃまあ、特に自信の無いパーツなんてないけどそれは単にあたしが無頓着しかも自分に似た母親が好きだっただけで、いやいやいやあんたがどーしてあたしのそのパーツにこだわるのかがちょっと理解不能なんだけど!
 お互いの息が熱くて頭が熱くてたまらないのに、うまく没頭できてない感じがするのはまだ慣れてないからなのか。隙あらばひたすらツッコミつつかなめはソースケを蹴り倒して逃げ出したいのを耐えつづける。
 なんだろ、この感じ。靴の中に何か入ってる時みたいに、ずっと何かが気になるのに似てる。気持ちよく駆け出せない。それとも…はじめて、ってこんなもんなのか。
「ゴム、した方がいいんだよね」
 かなめに言われて「忘れていたわけではないのだが」と言った宗介が少し体を離して準備をする。こういうところで間が空くと手持ち無沙汰なもんなのか、と体の奥の変調に意識を集中しながら少女は思う。
 まあ、ビデオとかレディースコミックとか、やっぱ作り話なわけだし。
 妙な気分ではあるけど、あーゆースゴイこととかないもんだよね、っていうか。当たり前か。
 しごく真面目な顔でかなめに向き直った彼が、くちくちとぬめりをすり込むように差し入れた指先が彼女の奥まったところをかき分けて、前後にゆるくさする動きに腰の奥がぞわりとした。
「ん…っ」
「痛くはないか」
「だ、だいじょうぶ、みたい」
「そうか」 
 そっとゆっくり抜き取られるとぞわぞわが増して、たまらないような気分になる。眉をしかめて耐えていると、芽の部分を円を描くようにやんわりさすられて息が乱れた。
「ここはどうだ」
「な、なん、か、くすぐった…ひぁっ」
 うわへんな声出た…。
「ん、ちょ、そーすけっ、ふあ、」
 つぷり、と指をまた入れられて、声を上げてしまったが宗介の動きに焦りや乱れはない。触診じみた感触なのに、その奥に違うものの気配がひそんでいて耐え方が分からなくなってくる。
「先ほどよりほぐれてきたな」
 作業めいた物言いに、何となく腹立たしくなったかなめは、つん、とあごをそらして「なら、もう挿れたら?」と言ってやった。
「……いいのか?」
「…そういうもんなんでしょ?」
 頬を染め瞳を潤ませた彼女の精一杯強がっている風情に、斜め上を見上げてこめかみをぽりぽりとかいた宗介は、ぼそぼそと「しかし、あまり無理はしない方がいいと思うぞ」と呟いた。 
「何よ。…挿れたくないってわけ?」
 こころなしか震える声の主に、彼は即座に打ち返すごとく強く言い返す。
「否定だ」
 え、と、と口ごもるかなめの腰から尻を両の手のひらで包んで、彼はなめらかな曲線をそろりと撫でた。
「ちょ、や…くすぐったい、から…ひゃっ!」
 生まれてはじめてキスをされた箇所を隠すべく伸ばされた細く白い手をつかまえる。
「や、やだ、やめて」
「まだ慣らし方が不足だろう」
「わ、わかんないわよこんなことするの初めてなんだから!」
「…は?」
「悪かったわね、初めてで!どーせあんたは他の子ととっくの昔にすませてんでしょ!?」
「…俺もこのようなことをするのは、君が初めてなのだが」
「じゃあなんでそんな、え、えらそうなのよ」
 堂々としてるとは言いたくなくて、わざときつい言葉を選んだかなめに、きまり悪げに宗介が答えた。
「えらそうにしているつもりはないのだが、その、あらかじめ下調べは入念に行ってきたのでな」
「ふーん、誰とよ」
「主に映像媒体だ。医療関係の資料も当たったが、みな丁寧に充分な潤滑を得られるまでは挿入は行うなとあった。欲望に任せて性急であってはいけない、注意深く相手の体に思いやりをもって進めろと」
「あ、…あっそう…」
「俺も、君のことは大切に扱いたいのだ。今後に傷を残すような事態は望んでいない」
「う、ん」
 心配そうにのぞき込む宗介と目が合わせられなくて、首筋まで赤くなる。
「…千鳥。俺が信用できないか?」
「んなワケ、ない、っしょ…」
 見つめられている視線に緊張と失望の種のような気配を感じて、かなめは彼を見やるも青みがかった濃い灰色の目は真っ直ぐすぎて、やはり長く視線を合わせていられない。
 彼のことは好きだ。けれど彼と同じように真っ直ぐ彼を見つめるのは、苦手だ。
 息が苦しくて身動きが取れなくなってる間に、勝手にがっかりされてしまいそうで怖くてたまらない。
 けど、たぶんここが腹のくくりどころ、なんだろう。
「…ん、と」
 彼の首にほっそりした両の腕を巻き付けて固く目を閉じたかなめは、強く唇を押し当てて彼の唇をふさぎ、紡ごうとしていた言葉をとどめた。
 は、と唇を放した彼女は一瞬彼の目をのぞき込んだのち長い睫毛を伏せて「わ、わかった?」と早口に尋ねた。
 無言の彼をちらりと見上げて「…だめ?」と頬を染めたまままた目を伏せる。
 数秒の間ののちベッドマットに背を押しつけられたかなめは息もつけないほど唇を深く合わされ、奥まで貪られた。
「ん、んうう、ぁ、ふっ」
 涙目の彼女が苦しげにあえぐまでのしかかっていた宗介は、我にかえりはしたものの抑えがたい熱をかなめの濡れはじめた花弁に押し当てこすりつけた体勢のまま彼女の両脇に腕をつく。 
「…、その、……すまん。いろいろと無理だ」
「な、なにがよっ」
「我慢はするが、いささか耐え難い」
「だから何がっ?」
 張り詰めた熱の大きさを敏感になった箇所で否応なく感じさせられた彼女は、唇を引き結んで横を向いた。
「つ、続きやるんでしょ」
「…無論だ」
 あごを引いてうなずいた彼の頬を汗がつたい落ちて、かなめは二人とも汗だくだったことに気が付いた。
「…っ、……ー、」
 痛みをこらえて体をこわばらせる彼女を気づかいつつも滑りが悪いのか、うまく入らず手を焼いている宗介にシーツを握りしめてかなめが言う。 
「無しでもい…、わよ」
「…それは」
 もう、そんなところはとっくに行き過ぎてしまっている。行きすぎてしまっているからこそ今さらのこの体たらくとも言えるのだけれど。
「あんたがいやなら、ゴムしといて」
「それは、…俺としても…無い、方が」
 ややあってふれてくる感触が変わり、いくらか滑らかに割り込んでくるのを感じた。直接伝わる熱は痛くも何とも無かったが、これからを想定してかなめは歯を食いしばる。
 たしか新生児の頭の直径が十センチくらいだって習ったし、それに比べたら…ってそんな太さのもん入れた事なんてないけど。ソースケとの前に、そんな目に合わなくて良かったけど、これそーすけじゃなきゃ絶対泣いてるとこだ。
「千鳥、力を抜いてくれ」
「……っ、ー…っふ、」
 できるだけやわらかくそっと押し進められているのは感じたけれど、押し広げられていく限界を少し超えるほどの圧迫感と、何か弱い電流のような感覚に圧倒されて知らず息が漏れる。 
 奥の奥に何か当たったような感覚があったが、もう一押しされて彼と密着した。ぎちぎちと全く隙間無く埋められたような、息苦しくはあるが安堵に似た感覚に、かなめはようやく一息ついた。自分的には山の頂上でバンザイして「終わったー」という感想だった。あとは無事に下るだけだ。
 同じく深く息を吐いた宗介が彼女を抱きしめて頭をすりつけてくる。でっかくて重い犬にじゃれつかれているような、もっと違うもののような。
 少し焦点のぼやけた、いたわるように細めた目を間近に見て、また苦しくなる。
「嬉しいの?」
「ああ」
「…きもちいい?」
「肯定だ。…君は、痛いか」
「…いちおう、ちょっとはね。どっちかっていうと、きつい」
 ソースケの感じてるきもちいいはわからないし、多分それはやっとつながれたのが嬉しいとかほっとしたとか、そういうのじゃないかと思う。
 遠慮も断りもなくキスされて、キスを返す。くりかえすうちにまた深くなってくる。
「んっ」
 ぞくぞくと背中を走る電流に似たものがたまらなくて、背がわずかに反った。
「本当に、大丈夫なのか?」
 何か激しいものを押し殺して囁く声にこもった熱が頬と耳に当たって、かなめはぎゅっと目をつぶり宗介の二の腕にしがみつく。そうだった、彼はこれから、なのだろう。
「……ん、大丈夫」
 抱きしめたやわらかな体の手応えに、宗介の心臓の鼓動も衝動もこれ以上ないと言うくらい激しくなる。 
 もっとキスがしたい。
 深くつながったところを確かめたい。
 今まで見たこともなかった彼女の姿を焼き付けたい。
 彼女を傷めることなく、できるなら自分の感じるようにこのつながりを快く感じて欲しい。
「…、無理なら、やめるぞ」
 苦しげに息を弾ませる彼女の内側はやわらかいがとても狭く熱が高くて、重大な危機にさらされているのではないかと危ぶんでしまうが、思うばかりで体が止まらない。自分の意志を離れた体の欲求を恐ろしく感じていると、強く頭を振って髪を乱した彼女が目尻に浮かんだ涙を隠すかのように彼の腕に額を当てて、くぐもった声ではあったがはっきりと言い切った。
「そ、そーすけの…好きにしていいか、ら、…続けてっ」
 ちどり、と呟いた彼は、はじけるように脈打つものを彼女の中に吐き出した。 
「ん、あ…あ」
 指を組み合わせ重ねた手を握りしめて押し出されるように声を漏らしたかなめが、うわごとのようにつぶやく。
「なかで…でてる」
 声も出せず無言でうなずいた宗介は、とりあえずは収まってしまうまで動かずにただかなめを抱きしめて、心身共に果たしたかったことを果たせたような安堵を覚え、深く息をついた。
「出しちゃった、ね」
 目を閉じたままの微笑みが何かをなくしてしまった風情に思えて、避妊具はなしでいいと言われたがそこまでしていいという許可は取っていなかったことをようやく思い出した彼は、後ろめたい気分でおずおずとたずねる。この行為が原因で起きた全ての責任は当然取るにせよ、彼女の意志を土壇場で確かめられなかったことには悔いが残る。
「…だめ、だったか?」
「ばか」
 汗だくで涙を浮かべたようなかなめがほんの少し笑って、もう一度キスをする。終わりの合図にしてはずいぶん濃いな、と彼女が思っていると、終わったはずの箇所に先ほどとさして変わらない圧迫感を再び感じた。
「え、あ、ちょソースケ…?」
 しまったそう言えば一回で終わりとか、そういうことはぜんぜん打ち合わせしてない。てか、こういうのはフィクションだけのことで実際はそんな大したことないって聞いてたんだけど、…今やめてって言ったら空気読めないって感じなのかな。それより。
 うわ、何、これ。なにがおきてるの。
「ふぁ、…っは…、あぁ」
 しだいに波打つように押しつけられる腰の動きに、押し出される声をがまんできない。
 絶えず響くやわらかく濡れた音が恥ずかしくて目をそらすと、耳の下に熱く湿ったやわらかいものがふれた。何か言おうとして上手く言えないらしく、なんどか唇を押し当て、ちどり、とだけ囁いた聞き慣れていたはずの低い声に、身体の芯がきゅうっとちぢこまる。
「…っぁ、…ーっ」
「く、ぅ」
 彼女の奥にはちきれんばかりの自身を深く飲ませた彼は吐気を噛み、ともすればあふれ出そうな熱を引き止めて鞘の行き止まりを小刻みに突いてやる。
「んっあ、や、あ…ぁあっ」
 彼を押し包んだ箇所がじゅくじゅくととろけてねばり彼にまとわりつく。胎を貫く硬い熱に引き延ばされるようにかなめの背が反りかえった。
「や、ああ、か、からだヘンっ、そーすけ」
 かなめの奥深くが飲み干すようにびくりびくりと何度も引き攣って、刺激に耐えきれなくなった彼も歯を食いしばり、熱くやわらかな蜜の中、そこだけが固くこごった彼女の最奥へ自身を強く押し当てほとばしりきるまで精を放つ。
「ひ、っあ…あ、あ」
 やわい腹の奥を容赦なく叩く波に涙をこぼし、ひたすら深く感じるばかりの彼女の腰をつかみ寄せて執拗に中に吐き出しきった彼は、汗に濡れた白い肌をたどるように手のひらを滑らせて、細くやわらかいからだを抱きしめる。
「やぁあ、そーすけ、そーすけ…っ」
 黒髪をベッドにばらまくように乱し半ば惚けた風情で息を切らせたかなめは、しばらくの間軽くふれ合うだけでも身をすくませていて、宗介はなだめるように彼女を撫でてやり、そのたびに彼女の名を囁いた。
「千鳥、辛くはないか」
 ようやく落ち着いた彼女に、そろりと問いかける。
「……ん、」
 …きもちよかったから、と目を伏せたままもごもごつぶやいた彼女はそのままくたりと目を閉じたが、答え方がいささかまずかったようだ。
 数時間のちの起き抜け、再びたんねんにからだじゅうを確かめられ声を押し殺す努力をだいなしにされたかなめは宗介の腕の中で彼をさんざんに責めたがまるで効果がなく、かえって執拗に求められてしまいのどが枯れかけるまで今まで出したことのないような甘い声を上げる羽目になった。
「バカ。ほんとバカ」
 エッチすけべムッツリ、と彼に対しておそらくあまり言われたことのないだろう評価を連発していると、妙にすっきりした顔の宗介が、とても恋人に悪口を言われているとは思われないほど当然のようにうなずいた。
「うむ。我慢していたからな」
「…うっさい」 
 大した事ではなかったような大した事だったような、大病をして治った後のような気分でいると、かなめの頭を撫でた宗介がそろそろと抜け出していった。
「定時連絡と機材の調整だ。千鳥は休んでいてくれ」
 急に肌寒さを感じて彼の背中にちらりと目をやると、こっそりこちらを伺っていたらしい宗介と目が合って、頬が熱くなる。何ごとも無いように視線を外した彼も、見たことがないくらい耳が真っ赤になっていて、かなめはくすくす笑ってしまった。
 起き上がれるようになる頃には服も乾いていて、破瓜の傷を受けた彼女は注意深く風呂を使ったが、体の変化は確かにあるはずなのにまるでなくてもおかしくないような、へんな具合だった。
「その、…どこか、痛むところはないか」 
「ん、大丈夫。だれかさんのおかげでちょっと疲れたけどー」
 宗介はすこし腫れぼったい目元で笑うかなめをしばらく見つめ、彼女のまぶたに唇でふれる。
「え、あ、…ちょっ」
 まぶたの違和感に、彼に何をされて泣いたのかを思い出してしまって首すじまで赤く染まったかなめに、宗介はこめかみをぽりぽりかきつつ斜め上を見上げて、ぼそりと言った。
「その。千鳥は……かわいい、な」
「ななななななによそれ、どーゆーことよっ」
「いま君に言ったとおりだが。何か間違っているか?」
「う、う、うっさい」
 けんか腰の彼女にけろりと答えすぎて、どこからともなく取り出されたハリセンに背中や肩をべしべしとはたかれるが宗介にはノーダメージらしい。キャラが違えばサワヤカに「はっはっは」くらいは言いそうだった。
「なかなか痛いが痛くないぞ」
「ちょ、なんなのよあんたは!なんかすっごく腹立つんだけど!あたしほんとに…いろいろ大変だったんだからね?」
 ふむ、と考え込んだ彼は、振り上げられた腕をつかまえて彼女の体ごと抱え込むと、だまって深く抱きしめる。
「ひゃ、わ…ソースケ?」
「ずっと、君と、こうしたかった」
 ずっとだ、と押し出すようなかすれた声に、胸の奥が痛くなる。
「あたしもよ」
 かなめは肩口でうなずいた彼のぼさぼさした髪を撫でて指先ですいてやり、泣いているのか笑っているのかわからない温かみを抱きしめた。のんびりこうしておいてやってもかまわないが、少しばかりの懸念について尋ねておかないというのも連れとして難しい。
「…あのさ。そろそろ出ないとここの料金、延長になっちゃうんじゃない?」
 いやだ、ともごもごいう声が答えた。
「たとえ全財産を投げ打っても今は動きたくない」
「いやまあ別にそこまでしなくても、延長したところで半日ぶんくらいだと思うけどさ」
 かなめはうーん、と考える。ものには限度というものがあって、今まで押し込めてきた分どうも彼は行きすぎが多い。…おそらく、それだけ不安なのだろう。であれば。
足腰がほんのちょびっとガクガクしてるけど、ほんの一瞬胸を張るくらいならしてやれる。
「このぐらい、いつでも付き合ってあげるわよ」
 腰に手を当ててふんぞり返り、かなめはびしっと指摘した。
「ずっと一緒にいるんでしょ?」
 うん、だいぶハッタリだ。あの勢いで次も向かってこられたら本気で逃げないと体が保たない。いまはおくびにも出せないが。
「そうだな」
「次のポイント探さないと、だし。…つ、次もこうとは限らないけど」
「努力する」
「し、しなくてもべつに…ああもーあんたは!」
 なんなのよそのイイ顔は、と胸元を小突くかなめの拳を捕らえた宗介は、ほっそりした指のゆるむのを待って指をからめ、手をつないだ。

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以下、反転してご覧下さい。






「ん…おー。バッチリ」
 ホックを留めて、鏡の前でくるりと回ってみる。上下揃いのブラとショーツのセットは多めの布地に控えめにレースを使ってある、学生らしくシンプルかつ清潔で可愛らしいデザインだった。
 腰に手をかけて下着モデルのようなポーズを取ってみると、事実我ながら本職と見まごうほど違和感がない。
 次は少しよそ行き、というか普段着るよりもちょっと大人っぽくかつ可愛い、レース多めのものである。こちらもサイズ的には問題がない。
―問題なのは。
 いや。付け方は知ってるんだけどさ。うん。
 ていうか通販の福袋とはいえ学生相手にこのオマケはどうよっていうか、まあ向こうの人はこっちのサイズは知ってても社会的身分は知らない、からなのか。
 安すぎるとすぐダメになったり肌当りが悪かったり、デザインがイマイチだったりするから、そこそこ高めのもののあるお店のセール品を狙うのが「賢いやり方」だと思ってたんだけど。
「…どーしよ、これ…」
 かなめのほっそりと白い指先が、死にかけの蝶でもつまみ上げるかのごとき慎重な手つきで広げたものは、薄く軽く華やかなレースが透けて美しいガーターベルトであった。
 通販会社の企画したお得な下着上下セットの詰め合わせは、サイズと希望の色味のみ指定して、あとはお任せという仕組みになっていて、ナイスバディであるがゆえにイマイチ店先では選択肢の少ない女子高生である千鳥かなめは、地元商店街のセールと合わせてそういった購入法も選択肢の中に入れていた。
 たかが学生の身分に、余りにも本式できちんとしたランジェリーショップはハッキリ言って敷居が高い。
 そういうことを詳しく母親と協議する前に亡くしてしまったかなめは、同性のもたらすこまごまとした情報は大事にすることにしている。
 言動はヤクザの娘の美樹原蓮の方がよっぽどそれらしいとはいえ、いちおう父親をパパ呼ばわりして有名ブランドものをデートで着用する程度にはお嬢さまの範疇に入らないでもない稲葉瑞樹が「下着ってのはね、きちんとお店で採寸してサイズのあったものを試着してから素材の良いものを付けなきゃ体に悪いってママが言ってたから、こないだ一緒に買いに行ったんだけどさあ」と自慢半分でのたまったのを、その場では半分聞き流していたのがいちおうの今回のコトの発端、ということになるのだろうか。
 自信たっぷりな態度はともかく、内容は確かに肯ける、と人づてとはいえ同性の先輩の意見を尊重する気になったかなめも視察と冷やかしを兼ねて、学校帰りにその旨の看板を掲げているところへ行き当たりばったりに入ってみることにした。
 だが、ふかふかの絨毯に薄暗い室内、豪奢なソファーにシャンデリアが狭い室内にみっしりしていて、同行の恭子は引け腰になるわ値段はたいして割り引いてないわ、ていうかコレって下着が好きで買い慣れたOLさんといわゆる本職の方向けよね的なのが薄々わかる商品展開の店舗であったため、将来への布石と暇つぶしを兼ねた店主のマダム(押しが強い)による正式な採寸だけ済ませて、学生鞄を下げたままの彼女らは早々に退散した。
 薄暗いにもかかわらずきつい照明の店から出たら、晴天がやけに目に染みたのも良い思い出である。赤黒いカーテンとキンキラキンとひらひらぴらぴらスケスケの組み合わせの内装及び展示は、たぶんその日だけで一生分に足るほど見た。
 それはともかく、後日その店舗で見たのと同じものや似たようなものが幾ばくか安価に提供されているネットショップを発見し、セールや福袋となるとついチェックしてしまう学生主婦が、企画されていた福袋と大まかなセット内容の予定の記述を先日見かけた値札と比べて頭の中で電卓を叩き、いけると踏んで注文したのが先頃のこと。
 素敵なおまけ付き、とあったから、余分のショーツの一枚でも入っていればめっけものと思っていたらば、店側としては大奮発なのだろう、購入したブラとショーツにデザインを合わせたガーターベルトと足がきれいに見えるというガーターで着用するタイプのストッキングがセットで入っていた、という次第である。
 まあ、自分のサイズでブラとショーツがこの付け心地で二セット入りなら、大満足だ。いい買い物をした、と我ながら思い切ってエンターキーを押したこの手を褒め称えたい。
 とはいえ。
 女子高生で、ガーターベルト。
 しかも今まで知っているとばかり思いこんでいた付け方は、説明書によれば正確には「逆」だった。
 クーリングオフありの通販とはいえオマケだけ送り返すのも気が引けるし、捨てるのはいつでも出来るかと新品の下着姿のまま貴重な青春の時間を小一時間ほども費やして悩んだかなめは、えいや、と鏡に背を向けて、薄い青のレースにふちどられ飾られた上質な下着の、下を脱いだ。
 そう、ガーターベルトの着用法というのはまず、ガーターベルトを装着してのち、股の部分のないストッキングをはき、ストッキングのふちをベルトから垂れ下がるストラップの先のクリップで留め、のちにショーツなりタンガなりTバックなりというそれぞれの形状で呼び分けされる女性用下履きを着用する。
 つまりかなめの脳内に浮かんだ言葉を使うなら「ぱんつが後」なのである。
 想像していたよりもっとスカスカしてた、と難しい顔で鏡の中の自分の首から下だけをチェックしたかなめは、うはー、と更に落ち着かない気分になる。
 うたい文句の通り、少し濃い色のストッキングは陰影が美しく、その年齢を活かした生足派の彼女から見てもコンビニや安売りで買ったものとはおもむきがまるで違う。見慣れた自分の腰から下だけが急に大人になったようで、とりあえずベッドサイドに腰かけた彼女は脚を組んでみた。
「…ほほー、これはなかなか…」
 水着試着中にもアホっぽくグラビアアイドルじみたポージングを試してみるような娘さんである彼女は、脚を崩して可愛いポーズを取ってみるが予想通りしっくり来ないので、ちょっとのけ反るようにして脚を少し開いてみたり組み直してみたりして思いつく限りの角度からの見え具合をチェックすると、おもむろにクローゼットの中から堅めのバイト時やその面接時に重宝している七部袖の白い開襟シャツおよび黒に近い濃色のタイトスカートを引っぱり出して着てみた。この際脳内の「何やってんだ自分」的ツッコミは棚に上げるのが作法である。
 鏡の中の全体像をチェックして、さらに箪笥の小物入れから細い銀縁の伊達眼鏡@百均と、襟元のさみしいときにたまにする細い金鎖のペンダントを取り出す。
 ああ、こんな感じ、と腰に手を当てて出来上がりを見れば、彼女のなりは教生期間中の学生か、巧くしたら新任の女性教諭のような姿になっていた。
 鏡の中をのぞき込んで感じた違和感の正体を探る。しばしのち、ぽん、と手を打ったかなめは化粧台の前で眼鏡を外して、ごく控えめなナチュラルメイクを己の顔面にほどこすと、再び鏡の中の出来上がりをチェックした。
「よっし、こんなもんか」
 実際の職場であるなら、ストッキングの色がいささか濃すぎるのもはじめのイメージのうちである。イメージしていたものにいかがわしさが届かない分は、胸元のボタンを余分に外して調節してやる。
 かくして「女教師」いっちょあがり、ってなもんで。
 特に見せる相手も想定しないまま、しばらく脚を組み替え煙草でも吸っているかのようなポーズを取ってみたりだの、しどけなく寝そべってみたりだのしていたかなめは、ベッドの上をごろごろっと転がると携帯電話を取り出して開いてみる。
 あとでキョーコに送ってみようか、とその格好のまま自分撮りして、着信も新着メールもない携帯をぼんやりと見上げた。
 キョーコのPHSにはつながったことあるのに。
 相良宗介が所属する「正体不明の正義の部隊」ミスリルでの作戦中は、基本的に彼とは交信不能である。通信を傍受されると危険だからだという説明も理屈も飲み込めはするが、実感を伴っては腑に落ちない。
 和服の時は別人だと思ってか、当初ずいぶん落ち着かない様子でいた彼は、この姿を見せたならどう反応するのだろう。
 アレに比べたら変装レベル低すぎかー、と彼女は携帯を放り出した。
 宗介と初めて体を交えたのは少し前のことだった。酔いの勢いと状況がなければしなかっただろうとも、いつかはそうなっていただろうとも思う。
 彼の息づかいや肌の温度や汗の感触や、あまりぶつけられたことのない動きと勢いに呼吸が弾んでしまった記憶を、うつぶせになって目を閉じてやり過ごす。
 あれからもう一度、二人きりの時に互いの熱に手足を絡め取られるようにして、この場所で。
 けれどそのあと自分は学校の用でやたらと忙しくなってしまって、トモダチとしてのお互いの顔しか見せ合う暇のない日々を過ごしていたら、入れ替わるように彼の方の仕事が忙しくなった。
 結局どっちも告ってないし、付き合おうとも言ってない。だからカノジョ・カレシですらない。
 嫌いな相手ならしないってことにだけは、胸が張れる。
 疼くような熱をリアルに感じるようになったのは彼と行為に及んでからで、それまではどこか予兆や偶然が通り過ぎる時だけのものだったのに。
 ため息をついていたことに気付いて、かなめは体を起こした。
 別に彼にだって見せるあては無い化粧と装いではある。共に出かけるとしてもすっぴんか違うメイクだろうし。
 そもそも彼と「まともなデート」などしたことがない。するとしてもあたしがセッティングしないと、…したってあいつとじゃ、まともなお出かけになんかきっとならない。
 そもそも彼から、少なくともそのつもりの誘いなど受けた覚えはない。自分の勘違いならばともかく。
 体目当ての不自然さや身勝手さがいかにもわかりやすいタイプ、でないだけで、彼は自分以外の人間にも命が張れてしまうのだろうと、彼を見ているとわかってしまった。
 あたしのヒーローはあたしだけのヒーローじゃなくて、みんなのヒーロー、ということだ。しかも自分の共演パートはギャグ部分がメインときている。
 ようするに、―言いたくないけど、あいつ、たまってただけなんじゃないの?お手軽で手近だったってことに気が付いてないだけで。
 もしかしたら、…あたしも。
 ぺたりとベッドの上に座り込んだ彼女は、天井をにらみつけて強くまばたきすると、夕飯の用意をするべく立ち上がった。
 余分に炊いたところで冷凍すれば朝晩で食べきれる量だと胸の内で諳んじて、米を量り炊飯器にセットする。しばらく水を吸わせてから炊くまでに空いた間で、扮装とも言えないこの格好を片づけてしまうつもりだった。
 だが。
「…え、っと」
 どしたのソースケ、という訝しげかつ気の抜けた家主の声に、ドアチャイムをすっとばして扉本体を連打した上、今にも持てる武器と武力の全力でもって突入して来そうだった現役傭兵兼高校生は、安心と脱力のあまり肩を落とす。
「…君の、携帯、端末に異常はない、か」
 まだらに汚れた軍服の後ろに硬化プラスチック製の銃身を手早く収めた宗介は、眉根をしかめて口をつぐんだ。
 嫌な予感に苛まれながら階段を全速力で駆け上がってきたせいで、心臓も肺も痛い。だが、この程度のことで冷静さを失うようでは、彼女の信用に足る者とはとても言えまい。 それでなくとも「こちら側」では失点ばかり、頼もしいのは自分ではなくむしろ彼女という体たらくなのだから。
「へ?」
 ごそごそとポケットを探ったかなめは、PHSの真っ暗な画面に焦って電源ボタンを強く押す。予備電源で立ち上がった画面の端には、二件目以降題名のないメール七通と着信記録十五件、それから電池残量が最低限であることを示す表示が浮かんでおり、かの機体は次の瞬間ピーと甲高い音を立てて再び沈黙した。
「ごめん。電池切れてた」 
「…、なるほど、そのようだ」 
 片手で拝むように謝る彼女の掲げたPHS本体を一瞥したのちビミョーに彼女から目を逸らした宗介の、押し殺されてはいるものの全力疾走してきたのが丸わかりなほど乱れた息にくすぐったいものを感じてしまったかなめは、素っ気ないそぶりで「とりあえずごはんまだだから、出来上がるまで宿題でもしてたら?」と言ってやった。
 こちらが手を伸ばすのを待つふうもなく背を向けて台所に引っ込む彼女の、妙になめらかで透けてはいるが濃い色をおびた腿やひざ裏を眺め下ろした宗介は「君は今から出かけるところではなかったのか」と言いかけて、口をつぐむ。
 ほんのわずかなことが永の別れにつながることも多い業界に身を置いていると、自分や仲間の発言で誰かがふと忘れていた用を思い出し、出先で災禍に見舞われるといったことにも遭遇するものだ。
 せっかくようやく辿り着いた彼女のもとで、そんなことが起きてしまったら。
 もちろん自分も同行はするつもりではあるが、ぴったり貼り付いての護衛が可能なのか判別しづらいような匂いが、彼女の装いに疎い自分にも感じられた。
 何か公用に向いた姿でありながら、どこかに油断ならない戦略を秘めているような出で立ちに思える。
 …外出の用がないのなら、この部屋にとどまる方が安全だろう。
 見慣れぬ質感であると言うだけで、普段と変わらない丈の服装が随分と違って見えるのが珍しいだけだ、じろじろ見るのは不作法だと常から言われていることでもあるし、と何故か絶えず浮かんでくる後ろめたさに言い訳しつつ、彼は以前かなめに言われたとおりに玄関先で軽く服をはたいて砂埃を落とし油染みなどで汚れた上着を脱ぎながら、自分の気を彼女の足下からそらした。 
「とりあえず野菜炒めをあんかけにしちゃうから。宿題は今持ってるの?」
「ああ」
「じゃ、お米が炊けるまでに用意はあたしがしちゃうから、あんたはそっち片づけてて。古文、追加で課題出てるわよ。提出はあさってまでだって」
 う、とわずかに渋い表情になった宗介に、伊達眼鏡は外したものの常より大人っぽい姿のかなめがエプロンをまといながら、くすっと笑う。
 何となく出来の悪い、けれど可愛い生徒を持った若い教師のような気分なのは服装の設定のせいもあるだろう。
 うつむいて課題の範囲を確かめる宗介の前に、白い七分袖の両腕をついて彼の顔をのぞき込むと、ますますお姉さんっぽいセンセイになったような気がする。
「よかったわね、明日が日曜日で。あたしもう済んじゃったから、あとで教えてあげる」
 顔を上げて彼女を見返した彼は一瞬何と答えようか迷ったのか薄く口を開けたが、すぐに口元を引きしめて「そうか、すまない」とごくごく簡素にいつも通りの調子で言うと、すぐに溜まりに溜まった宿題の山に取り付いた。
 他の子なら「はーい、先生っ」なんてノってくれるんだろうなー。
 まあ、こいつからこのカッコ見て連想できるものとか意味とかに対する反応を期待しちゃいけない。んだろうけど。 
 やっぱ面白くないわねー、とかなめはため息をついて食器をテーブルの端に揃え「ゴハンできたら一時休止よ」と言って自分の戦場へと戻った。
 スカートの丈より長いせいで下に何もはいていないかのように見えるエプロンの丈もいつものことだが、と宗介は盗み見るように伺った先に気付かれぬよう息を吐き出す。
 当然あり得た事項に咄嗟に頭が回らず、焦って押しかけたあげく食事を馳走になり、自分の用にまで気を配ってもらっているというのに、気の利いた受け答えひとつすらできないのだから、しょうがないのだろう。
 すらりと伸びた美しい腕ときゃしゃな肩も、親しみをこめた笑顔の一つ一つが魅力的であればあるほど、失望を示しているらしい態度を胸の底に重く感じるのには、他の過酷な責務と違って慣れることができない。
 清楚ななりであるからこそ潜む爆弾のようなものには、…人前であのように襟元を広げたまま前屈みになるなど急所をさらすようなものだとでも、きつく言い含めねばなるまいが。
 細い金鎖を乗せて盛り上がる、双つの白くやわらかそうな質感のものを思い出しかけた彼は、おそらくはそのつもりなど無い彼女にそのような破廉恥な眼差しを向けたあげく誘惑に負けて学生の本分を怠るなど戦士として言語道断、とシャープペンシルが手に食い込むほど強く握りしめ、紙の表に刻み込む勢いで課題のタイトルと該当するページ数を書き込んだ。
「どう?ソースケ、進んでる?」
「予定したより進行が遅い」
 ふうん、と彼の向かいに座ったかなめは、態度は真面目だが部分的には劣等生のノートをのぞき込む。
「お米炊きあがるまでもう少しかかるし野菜炒めってすぐできちゃうから、今なら宿題ちょっとだけ見てあげられるわよ」
「そうか。感謝する」
 ん、とわずかに口元をほころばせたかなめを見下ろす形になった宗介は、ぶっちゃけ当惑した。
 かなめは基本的に土台がしっかりした美しい巨乳の主なので、角度的に谷間がモロに視界に入る。谷間そのものから視線をずらしても、ほっそりとなめらかな首筋から襟の奥に続くラインやくぼみの優美な鎖骨が否応なく、衣類に守られていない部位へと連想を誘導していく。
 しかし当の本人は、そんなことにはまるでお構いなしであるらしく、いたって真面目に出題範囲の解釈の質問や明らかに誤りである箇所の訂正などしてくるだけだった。
 これは、教育的に不適切な姿、ではないのだろうか。
 いつも彼女から立ちのぼる甘いやわらかな香りに混じって、嗅ぎ慣れない香料のものらしい匂いがする。どちらかというといくらか年かさの女性を連想させる香りだった。
 こんな時間にそんななりをして、どこへ行くつもりだったのか。
 こちらの用を優先させてもかまわなかったのか。
 課題を見守りながらも時おり明らかに気のそれた様子で、頬杖をついたままどこかを眺めやって息をつく姿に、本当は行きたいどこかがあったのではないかと気が咎めるのに、ここにいてくれと懇願してしまいそうになる。 
 一度ならず交わる機を得て、一糸まとわぬ露わな姿も見せ合った相手だ。そのことを本望だと言い切れもするけれど、それは自分が心底望んでいるほどには到底足りない、かするほどの僅かな機会で。
 ずっとふれられなかったせいでふれ方のわからなくなったひとが、手を伸ばすまでもなくキスさえできそうな側にいて、けれど彼女本人は自分を受け入れてくれるつもりがあるのかないのか、確かめることもできない。
 次第に煮えたぎっていく焦りに似た感情を圧力釜のフタのごとく頑固に封じた宗介は、これまで生き延びてきた経験で身につけている、切羽詰まれば詰まるほど事務処理方向へ突き進む癖を遺憾なく発揮しながら、非常に勤勉に彼女の提案や指摘を受け入れて丁寧に答案を作成していく。
「ん、上出来上出来」
 口ではお姉さんぽくそう言いながらも内心ぶうたれ顔のかなめは、すらりとした脚を組み替える。とたんにいつもと違う触感が長い足の表面でさらりと擦れ合い何かつれる感触があって、幾度かはいたことのあるストッキングよりも、むき出しで頼りない感覚が露わになる。
 確かにさー、ソースケいつもよりちゃんとしてるっていうか書いてる文字にも迫力があるっぽいし、屁理屈言わないでこっちの教えてることも素直に聞くし、そういう意味じゃこのセンセイな格好って効果あったのかもなんだけど!
 実は下着はすごいんですー、って…なんか、…あたしだけ変態くさいってどうなの。
 着替えてるヒマなかったしさ、あんな借金取りが押しかけてきたみたいなドアの叩き方されたら近所迷惑だし。
 五分もあれば履き替えられるんだけど、いま下手にコイツに見えないとこに籠もったら武器持って突っ込んで来そうだし。うう。
 などと考えつつもかなめは、そ知らぬ顔で羞恥心を押し殺す。ネット上にはもっと凄い下着もいろいろあって、正直女性から見ると直接的すぎて汚い印象のあるものもけっこう見かけた。
 アレに比べたら、これはちょっと趣味に走ってるけど、ただの下着よね。
 ふう、と頬杖をついたままため息を漏らして爪先を上下させたら、何か布をかぶせて直立させた棒のようなものが足に当たった。
 何これ、こんなとこにそんなもの置いてあったっけ?とかなめはいぶかしがりつつ爪先と足裏で探る。
 指の付け根でさすり上げて、何か上からかぶせてあった筒状の布が引っかかってそれ以上は持ち上がらなくなったから、今度は下を探ると平たく広がっていた。厚めで柔らかく伸び縮みする布の下は、妙にごつごつして固い。
 ん?と考え考え問題を解いている宗介そっちのけで足の先で謎の棒の形と正体を探っていたかなめは、あ、と気付いて足を引っ込めた。
「ごめん、ソースケ、足さわっちゃって」
「別にかまわん、気にするな」
 淡々と教科書に目を走らせながら答える彼をテーブルに置いて、適当に相づちをうった彼女は食事の支度に立ち上がる。 
 いつもなら一応は気遣うつもりなのか手伝いに立ち上がる素振りを見せる宗介が、席に着いたまま歯を食いしばってひたすら問題と格闘しているのを見て、あんなに切羽詰まって集中してるんならかえって悪いかしらと思いながら、切っておいた野菜を炒めてあんかけをからめた。
 それにしてもアレが人間の足か。何でコンクリの棒がうちにあるのかと思ったっての。
 鍛えてるからか男の子だからか、やわらかいとこなんかほとんどないんだよね。
 彼女はふと我に帰ると何を思い出していたのかに気が付いて、へらで乱暴にとろみのついた料理を器の中へかき落とす。
 さすがに空腹だったのか、出されたものをあっという間に食べ終えた彼が片づけに立とうとしたのを留め、かなめは一人で洗い物をし食器をふき食器棚にしまっていく。
 その合間にも彼の手元をのぞき込んで進み具合を調べ、側に彼のぶんの茶を置いてやるなどしていたが、宗介はほとんど顔を上げず課題に集中していた。少なくとも彼女の目にはそう見えた。
 古文が数学に切り替わったところで、ある程度お役後免になった彼女は向かい側に腰かけて彼の様子を見守っているうち、徐々に頬杖を折りたたむようにテーブルにうつぶせる。
 起こしたものかと目の端でちらちら様子を見ていると、寒い、という呟きが聞こえて宗介はそっと席を立ち、ソファの上の膝かけを彼女の肩にかけてやる。 
 途端に何か胸を搾るように押し迫ったものを感じて彼女の上にかがみ込むと、肌のかする寸前でかなめが顔をしかめて「ソースケ、くさい」と言った。
 慌てて離れてとりあえず謝ろうとすると、ふふふ、と目を閉じたままの彼女がふわふわした声で笑って「お風呂入ってきなさいよー」と呟く。
「…だが、君をこのまま一人にしておく訳にはいかん」
 自分でも欺瞞だと思う言葉に返ってきたのは、嘲笑でも罵倒でも皮肉でもなく「じゃ、うちの使えば」という返事で。
 彼女はどうやら寝てはいないようだが半覚醒状態なのだろう、と推察しつつも彼は「では遠慮なく」と答え、しばし頭をひねった後「他に俺にして欲しいことはあるか」と尋ねる。
「んー?…ヘンなこと言うわね」
「そうか?」
「ぅー…うん」
 もぞり、と頭を揺らしたかなめが軽く唇を尖らせて「もー」と不満げに言い、その表情からふうっと力が抜ける。
「……千鳥?」
「んー…あ、ソースケ、」
 急にはっきりした声に呼びかけられた彼は、彼女の声を漏らさず聴き取るべく耳を澄ます。
「好きならそう言って。ちゃんと…言わな…と、あたしが……わかんない…」
 尻すぼみに口をつぐみ、幸せそうに薄くほほえんでそれきり喋らなくなった彼女の傍ら、朴念仁は立ちつくしたまま感情の嵐の海原で大渦のど真ん中に叩き込まれていた。  

 ふと目を開けると、傍らに人の気配はなく肩に膝かけがかかっていた。
「あれ?トライデント焼きもうないの……あ、夢か」
 抹茶ヨーグルト味、一個しかないの欲しそうにしてたからソースケに譲ったけどやっぱ惜しかったなー、とかなめはいささかがっかりしながら何もないテーブルの上を撫でて、もう一度頬をひんやりした天板につける。 
 何か夢の中で宗介と話していた気はするが、実際に彼と何かやり取りしたのかも知れない。
 一つ伸びをして目をこする。彼が自分を起こしていかなかったのは自分がそう言ったのだろう。けれどあくびの涙はすぐに消えなくて、まばたきしながら念のために呼んでみる。
「…ソースケ?」
 途端に今まで物音のしなかったバスルームの方から、つかつかと足音が近づいてきた。
 この家の中では不必要に気配を消したり忍び足になったりするなと言い置いてあるが、身についた癖はなかなか抜けないらしい。
「千鳥。起きたのか」  
 どこかほっとした心地で見上げたら、薄くにじんだ視界の中、何か固いものを呑み込むような動きを見せた彼の顔が唐突にアップになった。
「ー!、んん、っ…」
 髪も肌も唇も何故かしっとりと冷え切っているのに、熱と激しさをそのままぶつけてくるようなキスをされて、わけが解らなくなる。
「は、…んぅう…、っ」
 身体を抱え込まれ背をテーブルに押しつけるようにのしかかられて、何度も唇を深いところまで貪られる。
 密着しあった下腹に固い棒のような圧力を感じて、確か以前もこんなふうに、そう思ったらカっと頬が燃えた。
 何が彼をそうしているのか、自分にはわからない。
 彼が自分に求めているものなど理解できない。
 理解、したくない。
 なのに体温も鼓動もとどめようのないほど彼の側で狂っていく。
「…っ、千鳥、」
 すぐには身動きできないくらい翻弄された彼女の耳元で、湿って熱の絡む囁きが漏れる。
 二の腕をつかむ彼の指の、手加減はしているのだろうがそれでも食い込む痛みにまで煽られ疼く奥を感じて、結局自分も飢えていただけなのだと思い知った彼女は膝頭をすり合わせて彼に中身を晒すことを恥じた。
 こんな格好、彼にだけは見せられない。
 独りよからぬ事を企んでいたのか、などという目で見られたくはない。
 先にお風呂に入るって言って、脱いじゃえばわからないし、でもこの間もそれだけじゃ結局逃げられなかったし、と身をよじって痛みを訴えることでひとまず彼をかわした彼女は、彼の手が再び自分にかかるまでを引き延ばすべく、寝起きの頭を働かせる。
 だが悲しいかな、基本が低血圧の彼女の頭脳が生死の関わらない場面でそうそう都合良く回らなかったのもまた事実。
 あたしがしてあげる、と素早く言い放ったかなめは、言葉の意味をとらえかねて直立不動の宗介の側にずかずかと近づいて彼の前に膝をつくと、ズボンのチャックを一気に下ろして中に手を突っ込んだ。
 そのあまりにもためらいのないやりように一瞬呑まれて身動きのできなかった宗介は彼女に触れられた途端、脳髄を衝撃に突き上げられて息が乱れる。
 あっという間に一番見慣れた形を取り戻した彼自身の先をちゅ、と音を立てて唇に含んだかなめは、思いきりそれらしい演技をしてみせてやる。
 何か甘い溶けやすいものでもしゃぶるように柔らかく舐め上げられ、熱く狭いところに吸い込まれて、彼は意識が真っ白に飛びそうになった。
「ち、どりっ」
 弾くと音がしそうな程張り詰めた自身の先端をちろちろと小刻みに舐められて膝が笑いそうになり、もうやめてくれなのかもっと続けて欲しいなのか、自分でも言いたいことが分からないまま彼女を見下ろすと、段差のぐるりと裏筋とをぬめる赤い舌先で舐めていた彼女と目が合った。
 どこかとろりとした眼差しが微笑むように細くなり、しごき上げるように根本にからめられた指先の細さと白さが、血管の浮いて奇妙な形の自分のものとはあまりに違って。
 慌てて彼女の肩に手をかけ自分から引き離すが、一瞬遅い。
 脈打つように迸らせたのと鈴口からつうっと吸い出されたのはほぼ同時、声もなく発しきってしまった後も身体の奥底から砕けて溶けそうだった。
 顔をしかめたかなめの赤く小さな唇の端から、白く濁った自分の体液が細いあご先に糸を引くようにあふれているのが網膜に焼き付く。
「まっず…何これ…」
 新しいティッシュで手と顔を拭いたかなめは、まだえぐみと青臭さのしつこく残るのどに眉をしかめつつ流しに向かう。
 コップを使う気にはなれず、手ですくった水で何度もうがいする。のどのいがらっぽさが落ち着いてから慌てて振り向くと、彼は無言でのろのろと服を整えていた。
 うそをつかなかったからって正しいわけじゃない。
 それに、もしかして彼も痛かったりイヤだったりしたのかもしれない、と思い至ったかなめは見慣れぬ高級そうな質感におおわれた爪先に視線を落とす。
 どうしよう。いくら逃げたかったにしても、これは。
 ちがうの、とつぶやいて何が違うのかも言えないでにじむ視界の中、向かい合わせに大きな爪先とズボンの裾が自分の足の横に並んだと思ったら、もう思いきり抱きしめられていた。 
「すまない。だが俺は、…君にさわりたい」
 軋むような声がして目尻を唇で吸われる。顔を動かしたら怯むように離れた呼吸がすぐに荒くなった。
 会えない間、歯を食いしばるようにして我慢を重ねて、…先ほどだって腕の中に囲い込んで思う存分ふれてしまいたかったのに、そんな場合ではないとこらえたものを。
 もうさわってるじゃない、と彼の匂いに触れて熱の上がりだした体を隠すように呟くと「許可が欲しい」というかすれた声が首筋に響いて、力の抜けそうな膝をむりやり支えたかなめは小さく肯いた。 
 背後から紛うことなく彼のものとわかる掌が下着の内側にすべり込んだが、何か心当たりのない手ざわりと手応えに戸惑う宗介に、まとっていたものが常と違っていたことに思い当たった彼女は、急に不安になる。
「や、やだ、やっぱり」
 背中から押されたせいでテーブルに両手をつくようにしていたから、押さえるひまもなかった。ショーツを抜き取られると同時に片足を脚の間に割り入れられ、まくれ上がったスカートの内側、固く力の強い指に押し広げるように尻をつかまれる。
 露わにされた箇所に呼気だけではない何かが当たっているのを感じて、ひくり、と火照って潤みだしたところがうごめいたのがわかってしまう。
「み、っ、みないでっ」
「そういう訳にはいかん。調査も視認もせずに、やみくもに探りを入れるのは危険だ」
「…ちょっ、なによその言い方、や、ぁっ」
 きゅ、と張りのあるすべらかな内側に指を沈め、宗介は桃のくぼみに似た場所に親指の先を当てる。逃げ腰の彼女の中にそのまま押し入ってしまいたいのをとどめて、そっとやわらかな潤んだ場所に指先を当てた。小さく尖ったところにぬめりを広げるために指先を出し入れして、少しずつにじみ出すものをすくい取る。
 手早くせねば巧くかわされてしまいそうで焦りもするが、きちんと準備が出来ていなければ、彼女は自分のすることで内側から傷んでしまう。
 先ほどの自分の体液に対する態度から察するに、彼女はこの行為、もしくは自分との接触の全てを受け入れているわけではないのだろう。
 被膜越しとはいえ腹の中に他人の精を受けるなど、自分ならばまっぴらだ。ならば彼女とて本当はそう思っていてもおかしくはない。
 自分に押し切られて承知したのだろうが、一度引き受けたら面倒でも最後まで投げることのない彼女のこと、おそらく気持ちが悪くても怪我をするよりマシだと思って我慢してくれているのだろう。ならば尚のこと手をかけて丁寧に慣らさねばなるまい。
 薄いなめらかな粘膜の下でほんのかすかに脈打っているのを指先に感じた彼は、指の腹を前後に滑らせてぷっくりと尖る箇所をつついた。
「っ!」
「赤くなってきたぞ。君はここが『イイ』のか?」 
 彼の声音はあくまで真面目そのものだが、かなめは羞恥でまともに答えられない。
「や、やめ…、ひ、ぁっ」
「この辺りだろう。こちらもずいぶん濡れてきたようだ」
「……やぁあ…、ばかっ」
 何コイツさっきの仕返し?と思って腹立たしいのに足に力が入らず、彼の膝に乗り上げてようやく姿勢を保っているが、彼に足を引っ込められてしまったらみっともなく床に落ちてしまうだろうことが頭にちらついて、余計落ち着かない。
「は…、ぁう…、」
「指を奥に入れているところだ。抵抗は無いようだが、ずいぶんと締まってきた」
 ぬち、と締め付ける奥に収めてぎちぎちとかき回しているのが体中に響く。内ももは言われるまでもなく生ぬるい液でびしょびしょになっていた。
「やっ、あぁああ、…ゆ、揺らさ、ないでっ」
 立ち上がった胸の先が下着の内側にこすれて甘く腰の奥に響いたとたん、彼の指がもう二本も内側にあるのを強く感じて、かなめはテーブルのふちをぎゅっと握る。頭がどこかに飛んで行ってしまっているような気分でいると、くっと押し上げられたところからじわりと奥に波が広がって背筋がすくんだ。
「ここもか?反応が良いな」
「ぁ、あ、ソースケ待っ、」  
 ざらついた内側をこすり上げるように激しく出し入れをくり返す指を締め付けた彼女のなかが小刻みに波打って、彼はようやく彼女から指を引き抜いた。ぷつりと片方のストッキングがクリップから外れて足首までずり落ちる。
「これはこのままでもかまわないのか?」
「――…っ」
 無言で首を左右に振り目尻に涙をにじませてきつく瞼を閉じている彼女の汗ばむ首筋に黒い糸のような長い髪が絡んでいて、紅い唇からこらえきれないように乱れた呼気が漏れた。
 普段とは違う装いのせいなのか、それとも言葉に出して報告しているからなのか、刺激にひどく弱くなっている彼女の姿に目が眩む。
 入れて良いか、と尋ねようとした彼は、ふと疑問に思う。自分がそうしたいと言うばかりで、彼女の意向など問うたことはない。限界が目の前に迫っているにせよ、それではいけないのではないか。
「君はここに入れて欲しいのか?」
 返事があるまで待つにしても自分はそれまで正気が保つだろうかと危惧していたら、案の定唇を噛んで顔を伏せる彼女に我慢が出来なくなって、顔を寄せてゆるめるように重ねた唇を食んでやると、よじるように腰を揺らしたかなめが泣きそうに眉を寄せた。
「…………も…、…ぃ…れ、て」
「…………、…ああ」
 長い睫毛を伏せ顔を背けた彼女の体を反転させて細腰を抱え上げるようにテーブルに乗せ、白い足の付け根をできるだけやわくつかんで勢いで傷めてしまわないよう、そっと開く。力任せに奥底まで受け入れさせてしまいたくなる我をねじ伏せて、ぐ、と押し当てた自身が沈み込むように根本までかなめの奥に呑まれていくのを見つめてのち、狭まりからみつく内壁をゆっくりとかき回すように彼は腰を動かした。
「ひぁ、あ、」
 なめらかな生地のシャツに身を包んだまま背を強く反らせたかなめの中心で、更に固く熱をもった先端をまつわるやわいところごと引きずり出し強く押し込む。こぷこぷと滲み出した蜜があふれて、固く目をつぶったかなめは小さな拳を強く握り、腰を浮かせた。
 目を開けてこちらを見て欲しい。
 手首ではなく、手を握りたい。
 頭には浮かんでいるのに、そんな簡単な言葉が口に出せなくて焦れた彼は、ただ勢いにまかせて何度も奥へと叩きつけた。
 急に身勝手さを増した動きが虚ろにひびいて、彼女は受け入れたところが丁寧に愛おしむように彼を舐めているのを、他人事のように感じる。
 ずり上がった下着やわだかまったスカートに縛められたところが、ひりひりと痛い。
 飲んだぶんだけいっそう渇くような愉悦にあえいで、強く唇を重ねられても灼けつく体に追いつけないでいると、深々と差し込まれた姿勢のまま、うわごとのように訴えられ続けていたことに気が付いた。 
「す、きだ」
 千鳥、と名を呼びかけられて、ようやく意味が通る。
「え……あ、っぁ、あ!」
 きゅうっと身体の芯が熱くなり、すがるように舞わせた指先にあたたかなものがふれて、思わずしがみついた。 
「や、ぁ、ソースケ、…そーすけっ」
 細い指を握りしめて、高く呼び返してきた細くやわらかなからだを強く強く抱き込む。
 彼女と出会うまで数ある偽名の一つでしかなかった音は、彼女に呼ばれてから自分の名前に変わってしまって、もう他の名などいらなくなった。
 ヒトの名とはかけがえのないものなのだと思えるようになってから、ことに彼女の名は宝物のようで。
 どうすれば通じるのだろう。こんなことをしてはいても俺は君のことが、
「…――ちどり、っ」
 精を奥へと吐き出されてなお自分の中身を揉み出そうとするかのような激しい波にたゆたう彼女を抱きしめて、半ば露出した柔らかく豊かな乳房に頭を乗せたまま宗介は深いため息をついた。
 後始末のために仕方なく体を離し、未だ固く漲るものをずるりと抜き出す。声にならない声をかすかに上げた彼女の、ひくり、と反応した場所から去るのが名残惜しくてたまらない。
 しどけなく足を開き肢体に黒髪を絡ませた彼女は、半ば脱げた服を整えもせずテーブルに背をあずけてどこか遠くを見つめていて、そんな姿を見ているだけで再び頭が沸騰しそうになってきた彼はあわてて目を逸らす。
 黙って帰るつもりだったと今さら言って、誰が信じてくれるだろう。前回、そうとは自覚せずに手ひどく責めてしまって、ぐったりした彼女を前に随分と一人で反省した。
 あのあと忙しさを理由に彼女に誘う隙も見せずかわされてしまったから、それが原因なのだろうと自分でも思う。相当に負担のかかることでも付き合ってくれる彼女のこと、どれほどの負荷をかけてしまったのか見当も付かないのに、迂闊にふれるとどうなってしまうのか己でもわからず、止まれない。
 参考のために同僚などに問えば、我慢しすぎで死んだヤツはいないがヤリ過ぎで死ぬヤツなら昔からいるという。
 女性が多人数を相手にさせられて酷い目にあう話などいくらでも耳にするのにこの始末では、どれだけ僅かな距離であっても可能な限り遠くへと離れるしか手はない。
 …何故そうしたい相手がよりによって彼女なのか、と強く息を吐いて歯を食いしばり、彼は身なりを整えることに集中する。
 これ以上ないというほど乱れた姿でテーブルに崩れ落ちていたかなめは、終わるとほぼ同時に体を離した彼の背を追うともなく視界に入れたまま、まだ動けずにいた。
 荒れた波の内から引き抜かれた時もこちらの熱はまだ冷めてもいなかったのに、もう彼は普段通りに戻っている。
 髪を撫でるでもなく、何かを囁くでもなく。
 自分独りがいつまでもそこで寝ている訳にもいかず、かなめはのろのろと身を起こし、テーブルの下に落ちていたショーツに手を伸ばす。新品だったそれは目も当てられないほど汚れてしまったように思えた。
 彼は充分親切だし、冷たいわけではない。彼が自分の護衛に命をかけるのは任務だからで、自分相手でなくてもきっとそうする筈だ。そしてそれは彼の美点だと思う。自分が望んだことも声に出して頼めば、きっとしてはくれる。
 けど、最中にしか好きだって言わないってことは、結局コイツは、そういうことしてるときのあたししか好きじゃないってことよね。
 自分とてこの冷めようだ。なら自分も彼に乗られてはしたなく乱れていたかっただけなのではないのか。そう頭に浮かんだとたん、涙があふれて止まらなくなる。
 それでも――この体のどこもかしこも、肌をゆるしたひとにしかさわられたくなどないのに。
 汚れた下着を洗うために動いた彼女の気配に気付いて、宗介がふり向いた。
「千鳥?どうした」
「…何でもない」
 ショーツを握りしめた拳で目元をぬぐった彼女は、彼に背を向け洗面所へ向かう。
「何故泣いている?」
「何でもないって言ってんでしょ。あんたには関係ねーわよ」
 不機嫌そうな強気の声が涙でにじんでいるのをそのままにはしておけず、彼は意を決すると、服のまま犯されていたかのような姿の彼女を抱きとめた。
 疲れているのか、逆らいもせずに腕の中に収まって心だけ遠くに置いているような彼女に泣きやんで欲しくて、どうして良いかわからないまま声を出す。
「好きだ、千鳥」
「なんで?」
「君がそう言えと言った」  
「あたしが?いつ?」
「先ほど膝かけを君にかけた後だ」
「…そう」
 静かに答えた細い背が腕の中で冷えていくような心地がして、宗介は焦る。
 枯れ果てるように彼女の涙が止まるのを感じたけれど、そんな止り方をされるくらいなら、まだ泣かれている方がましだった。
「好きだ」
「…もういい」
 彼は歯を食いしばり、同じ言葉をくり返す代わりに抱きしめる腕に力をこめる。
「放して」
「いやだ」
 彼は彼女の細い体にすがるように身の内に抱き込んで、固く目を閉じた。
「俺は、この感情に相当する適切な言葉を知らない。だが君にそう言えという許可を得た。…君が受け入れてくれなくとも、俺、は、」
 耳を澄ませば聞き取れるくらいのかすれ声がのどを絞るように、君が好きだ、と訴える。
 うつむく彼女から落ちる暖かい雫がいくつも落ちて彼の腕を濡らしても、彼は彼女の髪に頬をすりつけたまま動かないでいた。 
 
 風呂上がりの彼女は、えいっとパジャマのボタンを閉める。
 胸の辺りが気になるけど、ソースケんちでも着たことあるっちゃあるし、すれたところが痛くてブラが出来ないんだからしょうがない。
 泣いたぶん気恥ずかしくて彼と目を合わせられないでいたかなめは、彼にすぐ側に来られて無視もできず、仕方なく顔を上げた。とたんに思わずといった様子で彼女を抱きしめてしまった彼が、密着した寝間着と薄いシャツごしにやわらかく弾力のあるものを感じながら「好きだ」と言ったら、距離が近すぎた。彼の体に起きたことがわかってしまったらしく、もじもじしながら頬を染めている彼女を見ていたら、余計に収まりがつかなくなってくる。
「えっと、その、ね、今日は、もう無理、よ?」
「いやそのこれは、そういったやましい意味ではなくてだ、な」
 言いづらそうな彼女にはそう答えたものの、一向に収まらないものはごまかしようもなく、宗介はぼそぼそと白状した。
「俺はどうやら君といると、頻繁にこうなってしまうようなのだ。我ながら情けない話なのだが、どうも抑えが利かん。…その、……すまない。離れたくはないのだが」
 つまり彼の好きは、彼女より気持ちも体も近すぎてしまうだけらしい、と覚ったかなめは、誤解の理由の他愛なさに思わずくすくす笑ってしまった。
「…千鳥」
「ごめん、ソースケ、あんたを笑ったんじゃないのよ」
 弱った目で見つめてくる彼を抱きしめると、おずおずと抱きしめ返すわりにやはり彼の力は強すぎて、彼女は「ソースケ、痛いってば」とわざと怒った顔で言ってやる。
 しばらく後、困った顔になった彼を慌てて解放した彼女になるべく奥にいるようにと言い置いて、宗介はドアの外へ出た。
 あの姿のまま人目に付くところへ出したくはないが、やはり物足りない。
 それに自分は好きだと言ったけれど、彼女はどうなのか。受け入れてくれるだけで充分すぎるほどだが、…それ以上は求めすぎだろうとも思う。だがしかし。
 後ろ髪を引かれる思いを嫌と言うほど体験しながら遠ざかる背中に、かなめは細く開けたドアの隙間から、小さく「だいすき」と囁いた。
 地獄耳の彼は、そのとたん首まで真っ赤になっていたが、かなめは気付かずドアを閉めて奥へ引っ込む。
 赤い顔ながらもしばらく平然と進んでいた彼は、階段の半ばでドアの閉じられた音を聴くと、足音を殺して全速力で彼女の自室に戻り戸締まりをこっそりチェックすると、やはり全速力でセーフハウスへと戻って本日二度目の冷水シャワーで頭を冷やし、どうにかセルフチェックにおける普段並みに近い落ち着きを取り戻すことに成功した。

 以下、反転してご覧下さい。



 なんだかお医者さんごっこでもしてるみたい、と後ろ手にカーテンを閉めたかなめは思う。
 並んで同じ事をしていた宗介は、特にためらうこともなく彼女にむかってかがみ込んだ。
 唇の内側をやわく淡くたどられて、力が入らなくなる。彼の顔を見てやりたいけれど、薄く目を開けたところで近すぎて捕らえられない気がする。
 あれから、抑えきれないものを無理に抑えたような声がおりにふれて彼女の耳元にだけ届く大きさで囁かれるようになって、もう幾度になるのだろう。
 その行為の名を知らない彼に初めてそうされた時これは一体何なのかと尋ねられたが、自分でも本当にそれがそういう名前のものなのか確証が持てなくなってしまって答えられず、結局そのまま行為だけは続ける羽目になってしまった。
 物珍しいのかもしれない。飽きるまでのことだろうと思う。自分が思うほどの快楽を相手も感じているとは限らない。
 その名を彼が知らなければ、いつでもその事実などなかったことにできそうで黙っていたら、彼は彼でこの行為に名などないのかもしれないと思ったのか、その後は何も尋ねられないでいる。
 そんな彼でもどこか後ろ暗い気持はするようで、他に人気のあるところで求められることはない。
 ただ、ひとの気配を覚ることに慣れた彼は余人の気配を感じなくなると、ことあるごとに彼女の耳元に唇をよせてくる。
「千鳥。…しよう」
「だめ」
 家に帰ってから、とかなめは早足になる。
 夕暮れの校舎の中はほぼ空っぽで、ここでまた足止めを食うといくら彼と帰宅するとはいえ、帰り道が真っ暗になってしまう。
 本当は、済めば毅然と顔を上げて自分で歩きたいのに、たったあれだけのことで膝も腰も背中も崩れてしまって、とても外にいられる風情ではなくなってしまう。
 ほっそりとした背を見つめて、宗介は拳をにぎりしめる。
 後ろから抱きしめて彼女の歩みを止めてしまいたい。けれどそうしたらきっと彼女は拒むだろう。
 何度かくり返しているうちに、他の用事に支障をきたすのもあからさまに見た。彼女の消耗を思えばいたしかたない。
 けれど、欲求も衝動も激しくなる一方で、まだこれについて怒られた事だけはないが、声を荒げられてしまったら、何か脆いものが砕けておしまいになるような予感だけはした。
 細く長く吐いた息に熱がこもる。
 彼女の甘い吐息を思うと目眩がする。
 この行為の名は何なのか。自分にだけ特別に起こってしまったことなのか。
 …彼女には、迷惑で厄介なことではないのか。
 今は黙って受け入れてくれる彼女が、ある日突然、拒んだとしたら。
 彼女と向かい合っての宿題の最中や、並んでの片づけものの最中に、ふと波が起こって我慢できなくなる。
「…千鳥」
「これが終わってから」
 他のことができるほどに回復するまで時間がかかってしまうのだから、しょうがない。
 では代わりに何かを、と思うけれど、乾いた体に水分の代わりに塩分や糖分を取っても癒えないように、代わりになるものは見つけられないでいる。
「もう、いいか」
「待って。もう少し」
 せめて用事さえ終わってしまえば、と違う方向へと向かう集中力をかき集めて筆記用具を握りしめる。
 そっと見やると、ことことと音を立てあたたかな湯気が立ちのぼり、先を赤いリボンでまとめた黒髪が忙しげに立ち働いていて、苦しくなると同時に胸の内に明るい灯のともるような心地がした。 
 腹は減っているのに、食事より欲しいものがある。
「ごはん、おいしい?」 
「ああ」
 それでも口に運べば満腹するまでいくらでも入るのが、彼女の尊敬すべき点だと宗介は想う。
 級友の噂話や連絡事項や休日の予定を楽しげに歌うように語る唇を、ふさいでしまうのはいけないことだろう。第一、彼女の声が聞こえなくなってしまう。
 彼はふいた食器をしまい終えて、しゅる、とエプロンの紐を外す彼女の後ろに立った。
 今日はもう予定はない筈だが、一度タイミングを見計らったかのように彼女の友人から連絡が入り、片手で拝まれ指先で時計を示されてそちらを見ればそれなりに遅い時刻だった上、通話はいつまでも終わりそうになく、やむなく帰宅する羽目になったことがある 
 誰を恨むわけにもいかないが、その日はやたら目が冴えて息苦しかった。この行為に中毒症状があるというのなら、彼女は大丈夫なのだろうか。
 …彼女から求めてこない以上、問題はないのだろう。
 安心すべき事柄に、胸底が焼けただれそうで彼は眉をしかめて強く息を吐く。
 彼の様子をちらりと伺って椅子の背にエプロンをかけた彼女は、シンクに後ろ手に両手をかけてもたれるとうつむいた。どこかふて腐れた子供のような仕草に、あまり歓迎されていないことなのではないか、と急に不安になる。
 にもかかわらず、性懲りもなく。
「…しよう、千鳥」
「……いいよ」
 彼女の手料理で胃の腑も充分に満たされている筈なのに、どうしてこの身はここまであさましくなってしまったのだろう。
 彼女がどこか苦しげに頬を赤らめ目を潤ませている。
 きゃしゃな体に何度も腕を回して捕えて、何か貴重なものを少しずつ啜るように内側を侵食する。
 舌先をふれ合わせて指先を絡め、くり返しくり返し。
 彼女が自分と同じ身でないことを嘆く心を打ち消すように。
 疲れたのか、自分にもたれていつもより大人しい仕草の彼女のさらさらとなめらかな髪を撫でる。何故かこうしている間は、彼女が自分だけのものになったように思えてしまう。
 ほっそりした肩を抱き寄せて息のかかる位置にいると、どこか暗い穴に二人きりで身をすくめているような、誰にも見つからないように息をひそめてしまいたいような心地がする。

 ある時「このままずるずるああいうことしてても、あれ以上のことはしないから」とふいに彼女が言ったが、何のことか分からず宗介は首をかしげた。
 すぐにかなめは何でもない、と、むいた芋から芽を取る作業に戻ったので、彼も自分のサバイバルナイフで手伝いを続ける。
「よくあんたそんなごついナイフでお芋の皮がむけるわね」
 感心しているのか呆れているのか分からない口調で言われて、水を張ったボウルに芋を入れた彼は、空いた手で頬をぽりぽりとかいた。
 どうも以前から彼女のこういう笑顔を見ると体がむずむずすると思ってはいたが、最近はした後でもないのに、彼女に体をすり寄せて首筋に唇でふれたくなったり指先をにぎりたくなったり、具体的にどうしたらいいのかわからないが体をもっと奥深くから密着させたくなったりしてしまう。
 それだけではなく、体の調子もおかしい。
 彼女とさんざんした後セーフハウスに帰ると、急に耐えられなくなって自らを取り出して弄ぶことさえある。馬鹿げた行為と思っているのに、何故かそうせずにはいられなかった。
 夢精の回数も増えている。検査の結果健康そのものだそうで悪い病気ではないというが、細かいところで動悸が増えたり呼吸がしづらくなったりしている。
 確実に栄養状態は満たされているのだから排出するものが増えるのはともかく、心肺機能が落ちているのはおかしいような気がした。 

 息をつぐように離れたとき指先で白い首筋をかすめたら、くすぐったそうなそぶりをして眉をすこし寄せている。
 夢の中に確実に見るだろう表情に心臓が激しく波打って、止められていた息を吐く唇に落ち着く間も与えず唇を重ねた。
 甘い呼気を舐め取って柔いところをからめ合って目を閉じる。
 彼女も自分も、少しばかり以前より慣れてきたように感じるのは、気のせいではないだろう。
 慣れれば慣れただけ、この病にひどく似たものが深くなる心地がするのも、また。

 かなめが席を外している間に彼女のつけたテレビの番組内での映画の紹介をしていたのを見るともなく眺めていると、男女が深く唇を重ねて体をからめ合っている。
 宗介は唐突に、あれは自分たちのしていることとまるで同じなのだと気が付いた。
 画面の中のブロンドの女性は「キスして」と男に言って、再び二人の唇が重なる。
 彼は頬に血が上るのを感じた。
 画面の中の、それまでは見過ごしていたような男女の有り様は、今はどう見てもただならぬ間柄で、…つまり自分が彼女にしてしまったことは。
 彼女としてきたことは。
 彼女と共通の友人は、さくらんぼの茎を口の中で結べる人は何が上手いと言っていたろうか。
 キスとはただ唇と唇を重ねることだけでも、対象の一部に唇でふれることだけでもなく。
 彼は口元を手でおおう。
 今まで重ねていたものの正体が、わかってしまった。
 けれどもう、彼女の呼気とやわらかな熱の甘さを覚えてしまった以上、後戻りなどできはしない。

 ――あれは、恋人どうし、の。
 
「どうしたの、ソースケ」
 彼女の声に引き戻されて見れば、いつの間にか画面の中身は騒々しいものに変わっていた。
 すらりとしたしなやかな肢体、甘い香りをこぼす艶やかな黒髪に、薄紅のちいさな唇。
 怪訝そうにのぞき込む大きな茶色の瞳に、小さく薄い自分の姿が映っている。
「…千鳥」
 宗介はかなめに手を伸ばして、知ったばかりの行為の名を出さぬまま、ただ「しよう」とひとこと言った。
 少しの沈黙の後「いいよ」と彼女は答え、いつものようにその背を抱き寄せる。
 これがいったい何なのか、どんな意味を持つ行為だったのか自分が気付いてしまったことを知ってもなお、彼女は変わらず同じことをさせてくれるのだろうか。
 隠したまま続けることはできるかもしれないが、…それはとても卑怯なことではないのか。
 ならばどう伝えたら、この唯一無二の体と心に正しく響いてくれるのだろう。
 指先をからめ合いソファの座面に沈み込む姿勢になって、互いを探り合う濡れた音がする。 
 は、と彼女の間近で熱く荒くなった息を吐き、あの画面の中の女優のように、いつか彼女から声をかけてはくれないだろうかと夢想して彼女の細い肩口に顔をうずめた宗介には、彼の荒れた髪を撫でているかなめの表情は見えなかった。

 以下、反転してご覧下さい。


 あまり派手にはならないように、でも子供っぽすぎないように。 
 マスカラとリップだけ塗る化粧のやり方は向こうで友達のお姉さんに教わった。
 自分のからだを守るためのことだから。
 でもやっぱり、少し遠くの街の薬局へ行こう。
 千鳥かなめは小さくため息をついて自宅を出た。
 彼は今頃一体どの国の空の下、否、波の下にいるのだろう。

 メリダ島に帰還中のデ・ダナン艦内で、他に読むものがなくなったのか珍しくサガラ軍曹が同僚に借りたらしき雑誌を広げていた。東洋人は皆子供に見えるが、実際に彼は子供といってもおかしくない年齢だそうだ。それでSRTとは恐れ入るが、なにせこの艦を設計から行った艦長もまだ子供でしかも女なのだから世界は広い。
 サガラ軍曹は護衛任務のため何故か日本のハイスクールに通い出したらしいと聞いて、彼が元からおかしいのかその日本のハイスクールが特殊なのか当人に様子を尋ねても全く要領が掴めず、日本に詳しいという評判のクルツ・ウェーバー軍曹に尋ねたら「両方だよ、両方」とのこと。
 まあ、確かにあんな適当なエロ本をあそこまでクソ真面目にじっくり丹念に読むやつが送るハイスクールライフって一体…?
 と、遠巻きに眺めながら、表向きは警備会社「アルギュロス」の職員ということになっている男は工具箱を下げたまま、食堂の隅で黙々と読書に励むサガラ軍曹の後ろを、そっと通り抜ける。ちらりと見たところそこは広告ページで、男性用避妊具についてでかでかと喧伝してあった。
 …熱心に読むようなページなのか、ありゃあ…。
 わからん、だがあのサガラならあり得る。
 近頃、護衛対象の「エンジェル」という黒髪の綺麗な娘とめでたくねんごろになったんだか、こっぴどくふられっぱなしなんだかよく分からないという話を噂には聞いたが、日本も日本人もともかく謎だ。
 ヤン・ジュンギュ伍長にそうぼやいたら「そうですねえ」と他人事のような相づちを打たれたので「お前の国の事じゃないか」と言い返すと、「いや、俺は日本人じゃないですよ」と言われてしまった。やはり東洋は謎だ。その中でも日本は特に謎だ。
 挨拶の声もかけず男が立ち去った後、宗介はウェーバー軍曹に押しつけられた雑誌をぱたりと閉じて腕組みをした。
『お求めはお近くのドラッグストアで!』
 何度見てもそう書いてある。ドラッグストアということは薬局だろう。日本の場合コンビニエンスストアも販売形態が似ているが、置いてあるのだろうか。
 帰還途中でどこかに買い物のために上陸するという事はないので、やはりここは東京についてから入手するという手筈ならば確実か。
 むう、とうなってから、ほぼ無人の食堂内で彼は頬をぽりぽりとかいた。
 千鳥かなめとそうなってしまってから、まだいくらもたっておらず、勤務シフトの関係でメリッサ・マオとクルツ・ウェーバーのどちらとも顔を合わせていない。
 質問したいこともいくつかあったが、それ以上にこのことは報告すべきか否か。
 護衛と護衛対象の間柄とはいえ互いに個人としての接触を全く禁止されているわけでもなく、極めて個人的な事柄でもあるし、そういった義務はおそらくないのかもしれないのだろうが何かひどく落ち着かない。
 個人的には千鳥と共通の友人である艦長どのにも報告した方が良いのだろうか、とも思ったが、彼女とはここしばらくのミッション中に顔を合わせる機会がそもそもなかった。
 千鳥は、何も言わない。
 ほんのわずかな時間登校した学校ででさえかろうじて挨拶を交わした以外は、まともな会話も出来ていない。
 とはいえ彼女と顔を合わせていないわけではなく、息をつく間もないほど急いで帰宅して、彼女に通話で逡巡しながら帰還の報告をした際にそれまでのように「雑用ついでに寄れ」と彼女が言い出してくれるまで待っていたのが、このところはその間さえ惜しくて帰宅とほぼ同時に押しかけるようにしてしまっている。
 自分が不在の間に学校であったことや連絡事項を聞き汚れた洗濯物を渡し、食事をして片付けをして。
 そんな穏やかな時間と自分にのみ向けられる笑顔だけでも充分以上だったのに、その表情も動作も全てこちらに向けてほしくなって、何かしている合間にもほんの少し体がふれ合ってしまうと、その他の時間は彼女の許す限界まで彼女の体の語る声と言葉を聞きたくなり、どうしようもないほど彼女の側にあることに溺れてしまう。
 あらがうところに無理を強いた覚えはないが、既に彼女の抵抗が少なくなる時間やタイミングのようなものがおぼろげながらもつかめるようになってきてしまって、熱心に必要とすれば体得できるものなのか、作戦行動時に身についたものの副産物なのかはわからないが、明らかに効果の得られている手応えに自分でも驚いた。
 けれどその分、彼女と口頭で交わす会話は明らかに減っている。
 体どうしを合わせて語られる声もそれまでのような他愛のないやり取りもどちらも、とは欲深いのだろうか。
 戦場にはありがちなせわしない生活なのだろうと思っていたが、自分の時間がそこまで少ないものなのだとは。
 そんなことをしているうちに、長年水筒だと思ってきたものが本来の役目を終えてみるみるうちに手持ち分が目減りしてしまった。
 もともと自力で購入したわけではなく、陣代高校に潜入する際メリッサ・マオ曹長が面白半分に皆から「日本の高校生らしく見える小物」を徴収してきた物品の中にあったものだ。
 その他のものは出来るだけ持ち主に返して回ったのだけれど、何故かこれだけは皆どういう訳か、やれ使い捨ての消耗品だからだの持ってても困らないからだのどこぞの土産だからだのと、更に余分に笑顔でよこしてきた。
 結果的には非常にありがたかったのだが、…今にして思えば、皆の笑顔の中にクルツが浮かべるものと同質の何かがあったように思えてならないのは何故だろう。
 それはともかく、まさしくそれは使い捨ての消耗品であって、主に使用しているのは自分側なのだから、…それに手持ち分を切らせてしまえばそれを口実に彼女に接触を断られるかもしれない。 
 彼女は未だ学生の身であって、まだきちんと伝えてはいないが、もしも本当に孕むことがあれば自分としては大歓迎であって彼女を養うのにやぶさかではない。というか出来れば一刻でも早く彼女と所帯を持ててしまえば、と思ってもいる。
 しかし、彼女には、自分たちのどちらであれきちんと学校を卒業するまでそういうことは望んでいないのだと匂わされた。確かに女子で高等教育を受けるのならば、今までの自分の所見でもそれは実に妥当な願いだと思う。
 そして高等教育は貴重なものだ。
 あの、学生が学業を放棄するという贅沢を寛恕されうる日本にあってさえ、義務教育までしか受けていない者は非常に少なく、つまりはそれだけ大切だとかなりの人数の人間も思っているらしい。 
 ということは、彼女とそういう形で接触を行いたければ、このゴム製品は必須ということになる。ホルモン剤等の薬物を摂取する、生殖器に可逆的・非可逆的に手を加えるなど他にも避妊手段はあるようだが、どうも一番手軽かつ互いの身体に負担が少ないのがこれ、ということのようだった。効果は完璧ならずとも高いという。
 …完璧でなかった場合はそれを機に、とも思っていないわけではないが、それでは彼女が今後望む生活に重大な支障を生じてしまうので、可能な限りは誠意を尽くすべきだろう。
 よし、と目的地の近づくアナウンスを聞いて、買い物への決意を固めた相良宗介は席を立った。
 
 迷ったけれど、髪はあらかじめ上げておいた。伊達眼鏡は駅のトイレでかけることにする。
 電車でいくらか行った先、少し大きな駅構内は人通りが多くて駅前のドラッグストアのチェーン店にも人は多くて、いかにも女子高生な子はうちの学校のとは違う制服だった。
 けど、もしかしてあの中に昔の同級生がいて、こちらを見抜かれたりしたら。
 小さな箱に入って並んでいるものは色とりどりでたくさんありすぎて、何がなんだかわからない。じっくり眺めるのも出来なくて、結局、棚の横にかごにまとめてあった特売の地味な箱に入っているのを買っていった女の人がいたから、しばらくビタミン剤や他のものを眺めてから慣れた買い物のふりをしてそれを取って、サプリっぽいお菓子も買って、レジ横に詰んであるタダの分厚い通販カタログも袋の中に放り込む。
 もし誰かにあったら「罰ゲームなのよ」って言えばいい。それとも自分自身の親戚のお姉さんのふりをしてしまおうか。
 そんなことを考えながら帰りの電車に乗る。
 駅のトイレで眼鏡を外そうかどうか悩んで、買うところを見られてなければ誰もバッグの中なんて確かめたりしないわよね、と箱だけ鞄の中に押し込んだら、ドラッグストアのロゴの入った袋の中にはカタログとお菓子だけになった。
 
 どこかの時点で適当な店に寄るべきだった。
 そう宗介が思ったのは、駅からマンションへ向かう途中にある小さな薬局の看板を夕闇の中に認めてからだった。うっかり急ぎすぎて彼女の自宅近くまで来てしまったのである。しかももろもろの考え事で頭がいっぱいで、このままでは帰還報告すら抜きで彼女の家に押しかけてしまうところだった。
 あの時自分が尾行されていることをカムフラージュするために買ってしまったものや、店主の当時の誤解は、今は理解できる。いっそのこと目当てのものの買い物ついでに堂々と晴れてそういう仲になったと宣言してしまっても自分はかまわないが、…誤解だった時ですらあの勢いで彼女が激昂した、ということは、その行動は得策ではないのだろう。
 というより…つまり、彼女にとって自分たちの仲というのは、そういったものなのだろうか…?
 今の今まで思い至らなかった、というかはっきりとはさせたくなくて埋めてしまっていた懸念に周囲の景色が揺らぐ。 
 無理に舞い上がろうとして、確実にそう彼女の口から聞かされることにも耐えられないからと彼女との会話もろくにせず、なのにつなぎ止めておきたくて。
 己のしていることは、そういう事ではないのか。
 けれど立ち止まりもせず進めて来た足は既に彼女の住まう建物と、セーフハウスとの分かれ道にさしかかっている。
 いかん、彼女に連絡、を。
 一瞬の逡巡の後、携帯端末を取り出してボタンを押し、見やった視線の先、ほっそりした女性がマンションのエントランスにいるのが見えた。
 髪をあげ、あまり見たことのない服装をしているが、あの背姿も体の線も当人が気付いてはいないであろう動き方のわずかなクセも見まごうことなく、
 千鳥。
 女もののバッグの中で鳴る音も、彼の所見の正しさを証明している。
「…はい。って、あんたどこからかけてっ」
 駆け込むようにエレベーターに飛び乗ってきた宗介は携帯端末のマイクを口に当てたまま「ただ今帰還した」と言った。
「見りゃわかるわよ、そんなの!」 
 携帯の意味ないじゃないの、もー、とふくれながらバッグにPHSをしまう彼女は、髪を結い上げ薄化粧をし、露出は少ないが体のラインはそこそこ見えるよう残した見かけない格好をしている。
 他に人目が無いのなら、思うさま抱きしめてしまいたい。
 ごつい端末をことさら丁寧に背負っていたバッグにしまうことで、どうにか密室の中での時間をやり過ごした彼は、他になす術もなく彼女の後についてエレベーターを降りた。

 うー、えーと、まあ…クラスメートとバッタリよりは気まずくはない、かもなんだけど、あたしがした変装の意味って要するに「買うところ」と「家に持ち込んだのがあたし」なのが、こいつ以外に知られてなきゃいいわけで。
 ミズキが前に校内のトイレにした落書きだって、風間くんや他の子や何よりコイツが真に受けてたし、今さら誰かになんか言われたって落ち着いておけば逆に噂だ、ってことにもなるかもだしというか、ううう。
 勢いだけで買ってきちゃったけど、う、うわああああ。
 これじゃまるで「そういうこと」を、あたしが期待してるみたいに思われちゃうかもしれない。
 うつむいたまま無言で鍵を開けているかなめの背後、むき出しの白いうなじから目をそらして薄汚れたなりの少年傭兵は奥歯を噛んだ。
 玄関のドアを閉めてしまうと自分以外の人間の匂いが濃くなった気がして、この場で幾度もなされた逢瀬の入り口と別れ際を記憶からシャットダウンするべく、かなめはことさらに胸を張った。
「ご飯、今から作るから。汚れ物はいつも通り、着替えはこの間のが洗ってあるわ。ともかくシャワー浴びて着替えて」
 有無を言わせぬ調子に気圧されて「了解」と応えた宗介は、慌てて砂埃まみれのブーツを脱ぎ風呂場へ急ぐ。
 風呂ぐらい、セーフハウスで済ませてくれば良かったのではないか。
 そわそわする全身の汚れを手早く落として、彼は水を頭からかぶる。
 買い物は出来なかった。手持ちは残りわずか、いや、それ以前に彼女の意志は。
 キスしたい。ふれたい。もっと声を交わしたい。
 もう彼女の姿を見て間近で髪の香りをかいでしまったからには、のぼせ上がった我が身に冷水を浴びる以上のことも出来ない。
 いつもと違う姿なのは何故なのか、と問えもせずに、ただ彼女が居ることに目が眩む。

 既に彼のいる家屋内で着替えるのはためらわれて、かなめは帰宅時の姿のまま簡単な食事の支度に取りかかる。
 でもご飯食べたらお風呂入りたいし。明日の用意もあるし。 
 この家のどこにいても、彼の姿や匂いや自分とはまるで違う体のつくりや動作を忘れていられる場所がない。ずっと独りで過ごせているならそれでもどうにかなるけれど、彼がいるともうだめだ。
 そりゃ、ちょっとぐらい抱きついたりとか。
 キスとか。
 嫌いじゃないけど、どっちかって言えばそういうのはするのもされるのも好きかもしれないけど、…ソースケは……そこで止まらない、し。
 や、やっぱ自衛手段だから、とバッグの中の箱の存在を思う。
 いっそ、アレ見て引いてくれた方がいい、のかな。
 なんていうか気のせいかもだけど、無理にナマでされちゃったとか別れたくない側が針で穴開けてたとかも聞くし、あたしはそういうことしないけど、初めての時もちゃんとハッキリ言ったというか言えたけど、言わなかったら…ソースケはどうするつもりだったのか。
 考えながらも手は休めることなく動かして、食卓の用意を調える。
 千切りピーマンの肉炒めとご飯と味噌汁、おつけものにお茶。
 …ずっと特別な事だと思ってたのに、どうしてご飯を食べるのや片づけるのとおんなじように、こんなふうになっちゃったんだろう。
「お風呂、…入りたい」   
「この後も入るのなら同じだろう」
「汗、かいた、し」
「この後もかくぞ」
「お化粧まだ落としてないし、……におう、から…っ」
 俺には君の香りを厭う理由がないと熱い息のかかる耳元でささやかれて、固い腕の中に囚われる。

 いつもと違う姿に他の何者かの痕跡はないかと焦るのに、はっきりと言われてしまうのが恐ろしくて彼女には訊けず、知る限りの彼女のからだを開かせるさわり方をしてやんわりとしかあらがえなくなった体中をなぞるように確かめても肌を奥深くまで探ってもそんな跡はなく、けれど不安でたまらなくて。
 どうすれば、ずっと。
 俺とだけ。
 俺にだけ。
 
 投げ出された白い腕に長い髪がからまっている。胸元の薄い紅の痣のようなものがやけに鮮やかで目にしみる。彼女のきめの細かい肌にこんな跡を残してしまったのは初めてだった。
 あとあとまで残ってしまわないだろうかとも、残ってしまえばいい、とも思う。 
 荒い呼吸を治める間もなく手持ちの最後まで使い切ってしまったゴムと呼ばれる小物の残骸の中には未開封のものは何度見ても無く、彼はやはり買い物に行くべきだったと眉をしかめた。  
「…どうしたの?」
「いや、…その、……出来れば俺はもう少し君とこうしていたいのだが」
 かなめは薄く目を開け、身を起こす。その行動を助けはしても、彼の傷だらけで太さも長さも彼女のものと全く違う腕や手は彼女を抱え込んだままだ。
 本気の本気で怒れば離れる。本当にいやだと言えば、その時は引く。
 カラダだけが目当てだっていうことも、あってもおかしくない。
 それでもこれはあたしの、カラダだ。
 あたしがあんたを好きだって思ってたはずなのに、…今だってたぶん、そうだと思うんだけど。
 デキちゃったら別れる人も結婚するひともそのあと別れる人も、続いてるようで違う人もいっぱいいるし、先のことなんか自分のことでもわからない。
 だから。
「あたしのバッグ、取って」
 静かな声がかすれているのは、何度も叫ばせたせいだった。 
 はい、と取り出され渡された地味な箱の裏面には、いかにも医療関係っぽいイラストと名称が記してある。
 しばしぼうっと箱を眺めていたら、優しい姉のからかうように彼女が微笑む。
「あたしが開けてあげようか?」
「…いいのか?」
「そんなに難しくないわよ?」
「いや、そうではなくてだな、……その、」
 口ごもる宗介の耳が赤くなって、今さら、と思いながらかなめは言ってやる。 
「…あたしの体のことだから、よ」
 そうだな、と呟いた彼は簡素な包装から中身を取り出し封を切った。 
「…?」
「え、何?」
「すまん、少々、待ってくれ」
 反古にしたものをティッシュにくるんで、新しいものを取り出すが巧く行かないらしい。
最初の頃も、緊張と不慣れのせいか何度も失敗していたが、器材への慣れが早いのかその後そういったことはなかったので、かなめはまじまじと薄手のラテックス・ゴムの袋をながめて原因を調べるため以前のものとの相違を探る。
「…あれ?」
 先ほど宗介が開けた彼の手持ちであったものを包んでいた四角い樹脂の袋と、新しいものとを見比べた。
「大きさ、違わない?」
「その、ようだな」
 包み紙も多少違っていたけれど、その内に封入されていたものの痕跡はかなめが購入したものより一回り直径が大きい。
「サ…サイズ、あるんだ、これ…」
 あー、まあそういえばNYにいたから、って悪口に絡めてそういう話にされたりとかもしてたし、そうでなくとも体のことだし個人差があってもおかしくはないというか、大柄な人だとそういうこともあり得るわけだし。
「ソースケはこれ、どこで買ったの?」
 何となく直視したくない気がするけれど直視せざるを得ない問題の前に、かなめはふんばってきわめて実利的に冷静に彼に尋ねた。
「もらい物だ」
「だ、誰に?」 
「職場の同僚だ。皆が役に立つ、消耗品だ、大は小を兼ねる、などとやたらに寄こしてな」
 ……………。
 しばしの沈黙ののち、いたたまれなくなってかなめは叫んだ。
「あーもー、せっかく変装までして遠くに買いに行ったのに!道理でなんか痛かったと思」
 言いかけて真っ赤になり、彼から体を離すようにして膝を抱え、うずくまる。 
「痛かったのか?」
「ま、前はね。そういうもん、らしいし」 
「今は大丈夫なのか」 
 思わず尋ねた男の鼻面に、ひらめく裏拳が見事にヒットする。
「合わないんなら終わり!お風呂入るからそこどいて」 
 目の裏に散る星の中、彼女を見送った宗介は彼女の残した言葉の意味をたどる。
 変装して遠くに…?
 わざわざ、これを。
 つまり先ほどの見慣れぬ大人の女性のような身なりは、そのためのもので。
 千鳥、と思わず後を追って浴室のドアを開けたら、シャワーノズルを握って振り向いた彼女は悲鳴を上げかけて慌てて口をつぐむと、取りあえずといった感じでボディスポンジを彼にぶつけて背を向けた。
「終わりって言ったでしょ!」
「いや、そうではなくて、だな…」
 日頃の行いが悪い、の見本のような信用の無さっぷりである。
「あれは、俺が買いに行くつもりだった。無駄にしてしまってすまない」
 謝らないで、と水音に紛れそうな細い声が聞こえた。
「……あたしの体のこと、だもの」
「俺のことでもある筈だ」
 起伏に富んだなだらかな美しい曲線の内側はやわらかくあたたかく、気丈で強くて優しくて全ての善いものの象徴で、大切で壊したくなくて、この先もずっと一緒にいたいのに…自分はそれをまだきちんと伝えてもいない。
「二人で買いに行かないか」
「が、学校の帰りとかダメだからね、ちゃんと私服に着替えて、それで、どっかなるべく遠くの」
 濡れた密室に踏み込んで、息を飲んですくむ体を抱きしめる。  
「……こういった事を、君が他人に知られたく無いのならば尊重はするつもりだが、いつまでも黙っていられる自信はないぞ」
「あ、あんたはからかわれたり陰口叩かれたことないみたいだから、そんなこと言うんだろうけど、あたしは困るの!」
「それでも俺には、皆に知られる方が都合がいい」
 言ってしまった後でしまった、と彼は顔をしかめた。
 彼女を慕うものの多さを彼女は知らない。当然の権利のような顔で、知らせてもいない。
「それって、どういう意味よ」 
「君は知る必要がない」
 いぶかしげに見上げてくるきゃしゃなおとがいをとらえてキスをしたら脛を爪先で蹴られて追い出されたけれど、痛みよりも体を巡るあたたかさの方がずっと強くて、タオルを腰に巻いた彼は軽くなった足取りで部屋のあちこちに行き、散らかしたものを片付け始めた。

「あ」
 宗介が風呂から出ても寝間着姿のかなめは熱心に通販のカタログのチェックをしていたから、隣に座ってしばし考えてから彼女が時々するように柔らかい身体に少しだけもたれかかると、自分がするようにではなく、仕返しのようにカタログの開いたページを鼻先に押しつけられる。
「通販でも売ってんのね」
 知らなかったわ、と彼女は素早くソファを立ち「お茶持ってくる」と口早に言って、伸ばされた腕をひらりとかわした。



 コメント:以前某様と軍曹さんについて多い「とある噂」の理由がわからない、とやり取りしていたのですが、たぶんこのあたりが原因かなあ、と言うのが元ネタです。
欧米向け標準サイズと国内向け標準サイズには差があると昔「アクション大魔王」という漫画で読んだもので。
てなことで桂さまにムリヤリ捧げます。 
(「はと倉庫」さまの20禁コンテンツ内に「ラバー・ラバー」関連四コマを描いていただけました!!ありがとうございます!!)

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