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・女性向け二次創作サイト・「フルメタル・パニック!」宗介×かなめを取り扱っております・二次創作物、ノーマルカップリングの苦手な方、15才未満の方、荒らしさんはご遠慮下さい
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 拙サイトのお客さまであるyosiさまが拙文「ゆめのなか ゆめのそと」を御覧になって、書いて下さった素敵宗かなです。正統派宗かなですよ!素晴らしい!!


 こわいもの


「恭子、大丈夫?」
 晴れ渡った空が清清しい朝の通学路。登校途中に一緒になった親友の常盤恭子に、かなめは挨拶もそこそこにそう問いかけた。
「え、いきなりなぁに? カナちゃん」
「顔色が優れない。不調があるなら、悪化する前に然るべき施設で治療を受けるべきだぞ、常盤」
 きょとんとした様子で返す恭子に、やはり一緒に登校していた宗介が言葉を添える。物言いはぶっきらぼうだが、彼なりに心配しての言葉であることには違いない。
 しかし、そんな二人の言葉を、恭子はぱたぱたと手を振って、苦笑気味に否定した。
「大丈夫だよぉ、具合悪いとかじゃないの。ただ、ちょっと夢見悪くて」
「……夢見?」
 恭子の言葉に、宗介は軽く眉を寄せて首を傾ける。その横から、かなめが気遣わしげな声を上げた。
「なに? 悪い夢でも見たの?」
「う~ん、ちょっと怖い夢……寝る前に心霊特番の再放送見てたから、そのせいだと思うんだけど……」
 答えながら、夢の内容を思い出してしまったのか、恭子の声がだんだんと尻すぼみになる。恐怖を誤魔化すように、ぽつぽつと夢の内容を語りだした。
「夢の中のあたし、カナちゃんと相良くんに頼まれて、生徒会の手伝いで、遅くまで学校に残ってるの。で、一緒にお仕事してて、途中であたし、一人でお手洗いに行ったのね。それで、手を洗ってる時に、鏡越しに、後ろに人影が立ってるのが見えて。驚いて振り向いたんだけど、誰もいなくて……目の錯覚かな、って安心したら……」
 そこで、恭子は言葉を切り、自身の肩を抱くようにして、一つ身震いする。
 話に引き込まれてごくりと唾を飲むかなめと、相変わらずの仏頂面の宗介に向け、恭子は吐き出すように言葉を続けた。
「……鏡のある後ろから、冷たいものが首に触れて……低い女の声で『つかまえた……』って……!」
「ぅひぃいぃぃぃぃぃッ!」
 悪夢だっ、と悲鳴を上げるかなめに、恭子は泣きそうな声を漏らす。
「そこで目が覚めたんだけど……ホントに怖かったんだよぅ」
「ああ、もう、それはマジ悪夢ね……それは尾を引くわ……」
 かなめも自身の肩を抱いて同意する。しばらく、暗くなってから校内のトイレに一人で行くのは遠慮したい気分だ。
 しかし、怯える女子二人の横で、この手の話に何の感銘も受けない稀代の朴念仁男は、不可解そうな表情を浮かべる。
「悪いが、俺には今の話のどこが恐ろしいのかよくわからん。後ろから首筋に触れた冷たいものは、刃物か何かだったのか?」
「なんであんたはそっち方面に行くかな!? 確かにそれはそれで怖いでしょうけど!」
 かなめのツッコミにも構わず、宗介はひたすら首を捻る。
「そもそも、手を洗っている最中に振り返ったなら、背後に人の立つスペースはないだろう。状況が非現実的だ。ありえん」
「ありえない状況だから怖いっつってんでしょうが!?」
 すっとぼけた発言をする宗介に、ついにかなめのハリセンが炸裂した。
 後頭部を張り飛ばされ、つんのめるような姿勢になった宗介は、その姿勢のまま器用にかなめを見上げると、
「痛いぞ、千鳥」
「うっさい!……あー、もういい。あんたにこの手の話の恐怖を理解させようってのが、そもそも徒労なのよね……」
 疲れた声で、かなめは諦めの言葉を紡ぐ。
 散々怪談を聞かせられたあげく、心霊スポットと噂される廃病院で不可解な事象のオンパレードを目の当たりにしても、けろりとしていた男だ。この手の感受性は皆無に等しい。
 この男が恐れるとしたら、実質的な被害を伴う事象だけだ。ただ現れて脅かす幽霊やら、何があっても実際には無事で済む夢の中の出来事など、そもそも恐怖の対象になりえないのだろう。
 と、そこまで考えて、かなめはふと思いついた疑問を口に出した。
「っていうか、あんたは見ないの? 悪夢っていうか、怖い夢」
「む……」
 怖い夢、といわれて宗介が真っ先に思い出したのが、いつぞや彼の上官の少女が来日してきた際に見た夢である。
 その上官が護衛役である宗介と同居、という状況に過剰反応して過保護で危ないオヤジと化した上官の副官。彼に『彼女に何かしたら……』と散々脅された上、過労でぶっ倒れた影響で見た悪夢だ。
 その夢の内容を、飛び起きた後の状況とセットで思い出して、だらだらと脂汗を流し始めた宗介に、かなめと恭子がぎょっとなった。
「さ、相良くん大丈夫!?」
「あんたが思い出しただけでそんなになるって、一体どんな悪夢よ……!?」
 そうかなめに問われても、しかし宗介には答えられない。
 上官と宗介の関係を知らない恭子の前で、同居云々の話はできないし、同居のことを知っているかなめだけに答えるにしても、何故だか妙に抵抗があった。何かが非常にまずい、と本能が危険信号を発している。
 しかし、この流れで何も答えない、というのも無理だ。自分は思いきり動揺を外に出してしまっている。『悪夢など見ていない』と答えても、彼女たちは信用しないに違いない。
 ならば、何か別のことを答えて誤魔化そう。その答えに行き着いて、宗介は別の悪夢を記憶から探し――
 思い当たった、日本(ここ)に来てから久しく見ていなかった悪夢の記憶に、我知らず表情が冷えたものになった。
「――宗介……?」
 急に雰囲気の変わった宗介に気付いてか、かなめが訝しむような声をかける。
「相良くん……言いたくないなら、言わなくてもいいよ?」
「……いや、そういうわけでは……」

 人の機微に敏い恭子が気遣わしげに言ってきたのに、宗介は頭を振りかけて――思い直したように頷いた。
「いや、そうだな……俺自身、話すのは構わないが――君たちに聞かせていいような内容ではないだろう」
 いつになく重い声でそう呟いた宗介に、かなめと恭子はかけるべき言葉を失った。
 傭兵として数多の戦場を巡り歩いてきた彼が、自分達に聞かせるべきではないと思うような悪夢。彼の素性を知るかなめは、朧気ながらもその内容を察して、俯いた。
 それは、きっと――人の死が関わってくるような内容で。
 傭兵としての彼を知らずとも、戦場育ちであることは知っている恭子も、何となく察したのだろう。言葉を失って、ただ気遣わしげに宗介を見つめている。
 しばし、朝の通学路に相応しくない、重苦しい沈黙が三人を包み――
「っはよー、さーがら! 千鳥と常盤も、おはよーさん!」
 ばしんっ、と駆け寄り様に宗介の背を叩いてきた、オノDこと小野寺孝太郎の明るい声で、その沈黙は破られた。
「おはよう。どうしたの? 三人とも、暗い顔して」
 オノDと一緒だったらしい風間信二が、宗介たちの様子に首を傾げる。その言葉に、恭子が真っ先に反応して答えた。
「あたしが昨日の夜、怖い夢見ちゃって、その話してたんだよ。ホンット怖かったんだ~」
「なに? 夢の話でビビッて、お前らお通夜みたいに黙りこくってたのかよ。ダッセ~!」
 殊更大げさに告げて見せる恭子を、オノDがからかう。
 話題を宗介のことから逸らした恭子の機転にかなめは感謝しつつ、自身もオノDの言葉に乗っかった。
「何よ~、ホントに怖いんだからね! 恭子、こいつらにも話してやって!」
 怒鳴るかなめに応えて恭子が再び夢の内容を語り、それをオノDが青褪めつつもありきたりだと笑い飛ばし、風間が朝からやめてよと震え上がった。
 三人を包んでいた完全に暗い空気は消えて、一同はひとしきり怪談話で盛り上がりながら賑やかに学校へと向かう。
 そうして校門をくぐった時、それまで黙って一同の話の聞き手に回っていた宗介が、不意に恭子へと声をかけた。
「常盤、目覚めてからも悪夢を恐れるというのは、つまりその悪夢が現実にならないかと危惧している訳だろう」
「え?……ああ、うん、そうかも」
 宗介の言葉に、一瞬驚いたように目を見開いてから、恭子は頷いた。
 悪夢で見た場所、似たような状況を恐れるのは、無意識のうちに、夢と同じことが起こるのではと危惧するからだ。
 恭子の返答に頷いた宗介は、目の前の校舎の見上げ、備え付けの時計を見つめながら、言葉を続ける。
「俺が保安を担当する陣代高校は、例え夜であろうと容易く不審者が侵入できるものではない。また、もし侵入者がいたとしても、必ず俺が察知して対処する。君が夢見たような状況は、まずありえないと保証しよう」
「いや、それ、何か違うような……」
 宗介の『鏡の中の女の霊=刃物を持った不審者』の方程式に基づいた発言に、信二が呆れたように呟く。
 しかし、恭子はその発言に軽やかに声を上げて笑うと、笑顔で礼を言った。
「ありがと、相良くん。そうだね、相良くんの防犯している学校じゃ、お化けもきっと怖くて出て来れないよ」
「うむ。よくわからんが、不安が払拭されたなら何よりだ」
 自分で言うように全くわかってない顔で頷く宗介に、かなめは苦笑する。
 恭子が笑ったのは、宗介が普段の調子を取り戻して安心したからじゃないかな、などと思って――いつもならハリセンでツッコむような戦争ボケ発言をスルーした自分に気付き、それは寧ろ自分の方だと自覚して、一人で何となく気恥ずかしい思いを味わうのだった。


  *****************


 乾いた砂塵混じりの風は、咽るほどに硝煙と血の臭いがした。
 共に戦った部族の皆が、語り合い、笑いあっていた場所は、今や、瓦礫と肉塊が転がる廃墟と化していた。
 と、瓦礫の影から、よく知る男の腕が――自ら授けた名で呼びながら、厭うことなく自分に触れてくれていた腕が、見えて。
 呆然とそちらに歩み寄って、その手を両手で握った。さして力を込めたわけでもないのに、その腕はずるりと自分へ引き寄せられる。――その先にあるべきものがない、腕、だけが。
 そのことに、名も知らない重く暗い感情が胸に押し寄せて来て――
「――絶望療法は効いたかなぁ、カシム」
 聞こえた、酷く愉しげな声に、弾かれたように振り返った。
 そこにいたのは、額に第三の目のような傷を持つ、逞しい体躯の男。腰掛けていた、禍々しいほどに赤い巨人の胸元から降りて、こちらへと歩み寄ってくる。
 この男が──皆の、仇。
 憎悪を込めてその男を睨みつけ、ふとその時、男の足元に転がる円盤が何故か目に留まった。
 見覚えのある、それ。
 彼のささやかな聖域、平和な学び舎の象徴――校舎の、時計の数字盤。
 見上げる度に、またここに来れたと、安堵を抱かせてくれたその象徴は、痛ましくひしゃげて地に転がって。
 ──何故、あれが、ここに。
 そう思った時、いつの間にか目前まで歩み寄っていた男が告げる。
 心底愉しげに笑いながら、狂気に満ちた声音で。
「いい顔だねぇ、カシム。癌を潰した甲斐があるってもんだ」
 癌、という言葉に、背に言いようのない怖気が走った。


 この男が、そう呼ぶのは――自分にとって、とても大切なもののはずで。


 呆然と、辺りの瓦礫を改めて見回す。
 薄汚れながらも、元は白かっただろう外壁。その下に覗く、白と青、黒の布切れ。
 見慣れた制服の――切れ端。


 ──違う、そんな、はずは――


 見えた景色から逃げるように俯いて――そこで見えたものに、凍りつく。
 自ら両手に抱く腕。日に焼けた、厳つい戦士の腕――ではなく。


 青い線の入った白い袖に包まれた、華奢な、女性の、


 ── 千 鳥 の


 その名が脳裏に浮かんだ瞬間――視界が暗転した。




 はっ、と引き付けのような声を漏らして、宗介は弾かれたように身を起こした。
 暗闇の中、荒い息を繰り返すうち、闇に慣れた目が辺りの景色を映す。
 自身が腰掛けるベッドの他には、簡素なナイトテーブルだけの質素な部屋。どこか薄汚れた内装に、ここが日本ではないと思い出す。
 “仕事”で来た内紛中の小国。この部屋は作戦開始までのセーフハウスの一室だ。両隣の部屋にはチームメイトたちの気配がある。
 と、そこまで確認して、我知らず詰めていた息を大きく吐き出した。
「……夢……」
 吐息に、安堵の色をした音が乗る。
 ───そうだ。あれが夢以外のなんだというんだ。
 宗介はかすかに震えている両手を、夢の残滓を握りつぶすように握り締める。
 部族を失ったあの日の夢は、昔はよく見た。自分もいつかはあんな風に、血と硝煙の臭いの中で果てるのだろうと、見る度に思っていた。
 けれど。
 彼女と出会って。彼女の世界を知って。そこに居場所のようなものを見つけてからは、ぱったりと見なくなっていたのに。
 何故今更、しかもあんな形で。
 無茶苦茶な時系列。自身は“家族”を失った直後の“カシム”。なのに、あの男はまだあるはずのない額の傷を持ち、ヴェノムに乗っていた。そして、あの頃の自分が知りもしなかった日本の高校の校舎を、彼女を、かけがえない帰る場所のように思っていた。
 無茶苦茶な夢だ。ありえるはずもない荒唐無稽な夢。なのに。
「――どうして……」
 呻く自分の両手は、震え続ける。
 あの男は死んだ。死の床に伏したあの男へ、他ならぬ自分自身の手で、激情のままに弾丸を叩き込んだ。あまつさえ、遺体はあの男自身が仕掛けた爆弾によって、跡形もなく吹き飛んだ。
 だから、ありえない。あの男が、自身の大事なものを壊すことは。
「もう、ありえないというのに……」
 呟いた時、ふと、脳裏に声が甦った。


 ───ありえない状況だから怖いっつってんでしょ!


 つい先日、悪夢の話をした時に、彼女が言った言葉。あの時は不可解だった言葉が、不意に胸の中にすとんと落ちる。
「そうか……そうだな、千鳥……」
 思わず、彼女の名を呟く。
「君の言う通りだ……」
 震える拳を解いて、顔を覆う。


 ───ありえない悪夢を見るのは、ありえないとわかっていても、なおそれを恐れずにいられないからだ。


 ありえないことと言い聞かせても、なお不安なこと。
 そんな不安から生まれる理不尽な悪夢だから、どうあったって払拭できない。
「……ありえないから、怖い……」
 思わず、呻く。何ということだろう。自分自身の不安からくる妄想が、銃弾よりも恐ろしいなど。
「――千鳥……」
 応えてくれるはずもない、遠くの人の名が、声になって零れる。


 ───声が、聴きたい。


 声が聴きたい。無事を確かめたい。この不安が下らぬ妄想だと、笑い飛ばせるように。


 そんな思いが、知らず手を動かして。


「やかましいッ! 何時だと思ってんのよッ!」


 長いコール音の後、携帯越しに響くのは、誰よりも声を聞きたかった人の怒鳴り声。
 びくりと竦んだ隙に通話を切られて呆けていると、ややあって、彼女の番号から着信。出た直後、弱気だった受話器越しの声は、言葉を交わすうち、徐々に怒りの色を帯びて声量を増していく。
「む……それは、その……すまん。つい、失念していて……!」
 宗介は、受話器越しの怒鳴り声に必死で応える。だらだらと脂汗を流して、非常に焦った様子で。
 でも、それでも。
 彼も、彼女も知らないけれど。
 そんな彼の口許は、ほのかに、柔らかく緩んで。


 ───もう、悪夢は、彼の元を訪れない。





コメント:yosiさまからのコメントです。
    「こんな拙文を雪見様のサイトに載せていただけて恐縮です。
表現力とそーかなへの愛情が比例しなくてもどかしいですが、これからもそーかな愛を世界の隅から叫びたいと思います」
 いえこちらが恐縮でありますよ(敬礼)!また是非叫んで下さいませー!
 拙サイト管理人としましては、ラブラブ宗かなをいただけましたことにモニタ前で雄叫びを上げながらお礼を申し上げまくるしか芸がございませんです(暑苦しい)。
     yosiさま本当にありがとうございます!!
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