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・女性向け二次創作サイト・「フルメタル・パニック!」宗介×かなめを取り扱っております・二次創作物、ノーマルカップリングの苦手な方、15才未満の方、荒らしさんはご遠慮下さい
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 ああ、やっぱり言うべきではなかったのだ。――あの時、素肌を合わせて君を温めたなんて。
 絶句して真っ赤になった千鳥かなめの顔を見て、宗介は後悔した。
 口は重い方なのに、彼女が相手だと、何故か時々口が滑る。
 後悔しても、一度口から出た言葉は取り戻せない。

 むっつり顔で頭の中身がぐるぐるになっている宗介の前で、赤い顔で口をぱくぱくさせていたかなめが、おそるおそる口を開く。
 まずは確認。
「……み、見た、のよね?」
 宗介も真っ赤な顔で頷く。
「う、……うむ!」
 そ…、そうよね。と、かなめも頷く。
 それは分かっている。シャワー中に倒れたのだ。見ないで運べる訳もないことは、最初から分かりきっている。あの当時から、それは分かっていた。
 次が重要。
 かなめはゴクリと唾を飲み込んだ。
「…………さ、触ったり…、とかも…したのよね?」
 またも真っ赤な顔の宗介が頷く。
「うっ………、うむっ!……だがっ、ひ…、必要最小限しか触っていない!」
 宗介の声が、らしくもなく跳ね上がる。
 そのせいでかなめは、ことさら動揺した。
 必要最小限って言ったって、今の話だと運んだだけじゃないワケで……。
「……………………」
 何をどう聞いたらいいのか分からなくて、かなめは俯いて指先をもじもじ組み合わせた。
「あ、あたしの…着てたTシャツは……」
 その前の段階が聞けなくて、一つ飛ばして尋ねてみる。
「俺のだ」
 いや、それは分かってるってば。
 宗介の即答にツッコミたくなったのを、かなめは我慢した。
 一方の宗介は、かなめに尋ねられるのを、ただ待っていることに耐えられなくなり、聞かれもしないことを喋り始めた。
「その……、君の体温が戻ったので、裸のまま寝かせておくのも良くないと思ったのだ」
 えーと、つまり、体温が戻る前は着ていなかった。ということは。
 つまり、素肌でソースケと――。
 か…かかかーっ!と耳まで真っ赤になったかなめから、視線を反らし宗介はまた喋る。
「君のっ、着替えはよく分からなかったのでっ、…その、引き出しには下着しかなかったのでっ」
 下着?
 ヒクッとかなめの口元が引き攣る。
 口が滑りまくりの宗介は、かなめの様子に気づいても、もはや舌が滑るのを止められない。
「ほかに適切なものも見あたらなかったのでっ、やむなく俺の着ていたTシャツを」
「着ていた!?」
 素っ頓狂なかなめの声に、宗介はびくりと反応した。
「そ、そうだが…?」
 つまり、直前までソースケが着ていたものを素肌に直接着せられていた――と?
 ………目がぐるぐるする。
「そのう……着せるときも必要最小限しか触っていないぞ?」
 彼女のやわらかな脇腹が、自分の腹に触れてしまったのは事故だ。わざとじゃない。
 己自身に言い訳しつつ、宗介はかなめに告げたが、そういう事故を知らない、かなめはかなめで、ぬくもりが残るほど直前まで自分の着ていた物を素肌に直接着せたことを、まったく何とも思っていない様子の宗介の朴念仁ぶりにも、ひたすら目眩を感じていた。
 いやいや。それよりも、そもそも――。
「ねえ……、あっためた時って、その……あんたは………、ふっ、服は?」
「………………素肌が効果が高いと聞いていたので」
 思い切って尋ねたかなめに嘘はつけず、宗介は、彼にしては遠回しに答えた。
 答えてから、かなめと目が合ってしまい、二人して真っ赤になって俯く。
 数々の苦難を乗り越え、晴れて恋人同士となって早一年。……一年経つが、二人はキス止まりの未だ清い関係だった。
 躰には結構自信のあるかなめだが、宗介はかなめに手を出してこない。そういう雰囲気になりかけると彼は慌てて逃げてしまう。
 どうしようもない朴念仁の奥手だからだと思うけれど、時々、自分の身体はソースケにとって魅力ないんだろうかと考えてしまうことも、かなめにはしばしばある。
 それが、付き合い始める前に、実は、恋人になった今よりも濃い身体的接触あったという事実に、かなめは狼狽えると共に不安になった。
 ソースケは、見たことあるのに、触ったことあるのに、何とも思わないの?
 ふくらむ不安のまま、かなめは恥ずかしさを押し殺して窺うように宗介に尋ねた。
「も、もう一度…、み、見たい?……あたしのからだ………」
「う、う…む!?」
 頷きかけた宗介が、慌てて首を横に振る。
「…いや!改めて見なくても!」
 瞳に焼き付いている――。目にした彼女のすべてが。
 さまよっていた宗介の目がぴたりとかなめに戻る。
 宗介の視線がかなめの輪郭を辿った。
 頬から首。腕から肩。胸。ウエスト。脚……。
 服を透かして見られているかの如き感覚に、かなめは思わず胸を腕で庇った。
「す、すまない……」
 尋常ではない視線で彼女を見ていたことに気付き、宗介の目がまた泳ぐ。
「待って!…ち、違うよ!ちょっとビックリしただけ……」
 腰を浮かせて帰ろうとする宗介を、かなめは慌てて引き留めた。
「だって、嬉しかったし……」
 ちゃんと、彼にとって自分の躰は魅力があったのだ。
 かなめは宗介の手をそっと掴んだ。
 彼が奥手なんだから仕方ない。
 もの凄く恥ずかしいのを我慢して、かなめは勇気を振り絞り、きゅっと彼の手を握って言った。
「ソースケならいいんだよ、あたし……」
 宗介は一瞬呆けたカオをして、はっと気を取り直すと、ブンブン頭を横に振った。
「ダメだ!そんなこと絶対いかん!!」
「……なんでよ?」
 泣きそうになったかなめに狼狽えつつ、宗介は彼女の手をぎゅっと握り返してキッパリ言った。
「結婚するまで、そんなことをするのは良くない!」
 ――あれれ?
 かなめは涙で少し潤んだ目を丸くして首を傾げた。
「じゃあ、結婚しなかったら、ソースケとはしないままなの?」
 問うたら、宗介も目を丸くして首を傾げた。
「……結婚しないのか?」
 何故そこで疑問形!?
 激しい疑問を感じつつ、かなめは新たに問い掛けた。
「………するもしないも……そういう話、したことあったっけ?なんで、いきなり結婚なの?」
 ぐわーんっ!!
 という文字が、でかでかと彼の頭の上に見えた。
「…………ソースケ、あたしと結婚したいの?」
「………………するものだと考えていた。……君は違ったのか?」
 半ば呆然と答える宗介の頭の上では、ぐわーん、ぐわーん、ぐわーんと、でかい文字が表出し続けて煩い。
 かなめは深々とため息を吐いた。
「…………なんで、ソースケは結婚するって決めつけてるのよ?」
 『好き』も『愛してる』も、言ったし言われたけど、結婚なんて、宗介は一言も口に出したことはない。
「何故と言われても…。愛し合っていたら結婚するものだろう?」
「…………………………………………」
 なんだろう?この短絡ぶりは。
 かなめは、さっきとは違う意味で頭がぐるぐるした。
「あのね…、そういうことは一人で思い込んでないで、ちゃんと言ってよ。言ってくれなきゃ分からないよ……」
「そうなのか?」
 心底、意外そうに言う男を、かなめは無性に殴ってやりたくなった。
「…そうなのよ!」
 衝動のまま、パシッとハリセンで彼の頭頂部をはたく。
「……いきなり痛いじゃないか」
「黙らっしゃい!人を散々悩ませておいて、何?その言いぐさ…!」
「……悩んでいたのか?」
「そーよ!あんたってばキスから先しようとしないから、そーゆーの興味ないのかな~とか、……あたしって魅力ないのかな~とか………」
「…………俺はすごくガマンしていたのだが」
「うん…」
 それは今よく分かった。頷いてかなめは頬を染めた。
「でも、そんなの分かんなかったんだもん。あんた、カオに出さないから……。時々、……ほんとに時々だけど、ソースケ、あたしのこと、そんなに好きじゃないのかな……とか………」
 驚いた宗介は、消え入りそうな声で呟いたかなめを、伸ばした腕でそっと抱き寄せた。
「愛してるとは言っただろう?」
「うん………。でも、人の気持ちは変わるから………」
 宗介は、かなめの頭から背中を幾度も撫で下ろし、さらさらした黒髪に頬を寄せた。
「俺は…ずっと君を愛してる」
「うん………」
 かなめは宗介の腕の中で目を閉じた。――あたたかくて気持ちが好い。
 大切に大切にしてくれているのを感じる。
 かなめは彼の胸に頬をすり寄せた。
「ごめんね。……本気で、ソースケの気持ちを疑ってた訳じゃないのよ」
「ああ……。分かる……と思う」
 かなめを抱き締める宗介の腕は、かなめを包み込むようでもあり、かなめに縋るようでもあり、それは、彼の強さと弱さの両方そのままだった。
「ねえ…」
「うん」
「あの時も、こんなふうに抱いてくれたの?」
「あの時?」
「……あたしを温めてくれたとき」
「あの時は……」
「うん…」
 言い淀む宗介に相づちを打って先を促す。
「もっと力が入れられなかった」
「…そうなの?」
「君は気を失っていたし、…裸だったから」
 かなめは宗介の腕の中で頬を染め、きゅっと彼の服の裾を握った。
「触れすぎないように歯を食いしばっていた。……こんなふうに抱き締めたら、いろいろ堪えきれなくなりそうだった」
「……今は?」
 宗介は目を閉じた。腕の中にある愛しい彼女のなめらかでやわらかな素肌を、彼の肌は覚えている。
「……………少し辛いな」
 切なげにかなめの耳元で吐かれた宗介の息が熱い。
「君は思い込みだと言ったが、俺は…、愛し合っていたら結婚するものだとずっと思っていた。……普通は違うのか?」
 嘘のない、純粋で真っ直ぐな言葉に、かなめは彼の胸に顔を伏せ、声を出さずに笑った。
 普段は、陰謀がどうしたとか罠がどうしたとか疑り深いくせに、どうして、こんなところばっかり純真なんだろう。
「違うことも、いっぱいあるよ」
「――君は?」
 真面目で真摯な宗介の声。
 この人は、誰よりも信じられる人。信じてる人。――すっと、信じたいヒト。
「あたしは……」
 かなめは、彼のためだけの言葉を、彼だけの耳に届くようにささやいた。
「で、では……!」
「うん……」
 ぱっと、むっつり顔を珍しく輝かせた宗介に、かなめは頬を染めて頷いた。

 この日、付き合い始めて一年間、キス止まりだった二人の結婚がいきなり決まった。



コメント:拙文「Wristlet key (立ち入り禁止区画)」のその後、もし宗介が千鳥にしたことがバレたら、という設定で「Inter-Mission」さまの管理人みちさまが書いて下さいました!ありがとうございます!!
     いや前フリ無しで充分以上に素晴らしいです!!むしろ拙文が邪魔なくらいだ!!独り占めしてると勿体ないので、お願いしてUPさせていただきました。本当にありがとうございます!!
 なおこれらの作品は「Inter-Mission」さまでも展示を開始されました。素敵宗かな作品がいっぱいです。
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 もう時効だろう、と何の気なしに事実をありのままに述べたら、妻から帰ってきた反応はまったく予想外のものだった。
「今日はお風呂一緒に入らないから!」
 真っ赤な顔で宣言する彼女に、宗介は戸惑いを隠せなかった。
「急になんなんだ……」
「っていうより、もうソースケなんかと一緒に入らないから!」
「何故だ」
「ひ、人がっ、気ぃ失ってるのを好いことに、人の身体好き勝手にするような卑怯者とは、もうお風呂なんか一緒に入ってあげない!」
「好き勝手なぞしていないぞ?身体が冷たかったので温めただけだ。人肌というものは話に聞いていた以上に効果があったようだ。……む?どうした?」
 カーッと温度計の目盛りが上がるように、妻の白い首筋から頭の天辺まで真っ赤になっていく。
 そのとき、呑気な調子のたどたどしい声が彼等をを呼んだ。
「おかーさーん、おとーさーん、おふろ、はいろー」
 今までお気に入りの絵本を大人しく眺めていたのに、父親譲りの空気を読まなさを遺憾なく発揮している。
 呼んだ内容もジャスト・バッド・タイミング。
 こんなところばっかりソースケに似ちゃって大丈夫なのかしら?
 と、かなめは子どもの将来が少々心配になりつつ、夫に背を向け、まだ赤い顔のまま足下の子どもにかがみ込んで優しく言った。
「そうね。もう入ろっか。でも、今日は、お父さんはお風呂別よ。っていうか、これからは、お父さんだけ別よ」
「なんで~?」
 目をぱちくりさせる子どもに微笑みながらも、かなめは背後の夫に聞こえるように刺々しい声で言った。
「お父さんが、昔、お母さんに変なことしたから」
 背中から盛大なため息が聞こえた。
「……子どもに妙なことを吹き込むのは止せ」
 かなめは立ち上がって振り返ると、腰に両手をあて宗介を睨み付けた。
「妙なこと?あんたがあたしにしたことの方が妙じゃない!?」
「だから温めただけだ…。そんなに怒ることなのか?」
「怒ることよ!そりゃ、お風呂で倒れちゃったのを運んでくれたのは仕方ないわよ?でも…、だからって、普通、裸であっためたりする!?」
「他に方法が分からなかったのだ。それに裸ではない。……下着は脱がなかったぞ?」
 くぁーっと、かなめの顔が更に赤くなる。
「そ、それにっ、き、着替えが分からないからって、自分が着てたもの着せたりだって、…普通しないわよっ!」
「仕方ないではないか。…君を裸のまま寝かせておくことなど出来なかった」
「……そお!全部仕方なかった、て言うのね!?」
「肯定だ」
 深く頷く宗介にかなめはキッとなった。
「それなら、ああやって倒れたのがあたしじゃなくても、あんたはおんなじようにしたのね!?」
 例えばテッサとか。
 と、共通の銀髪の友人を引き合いに出すと、夫は明らかに怯んだ。
「それは…同じにした、とは思うが……」
 だらだらと脂汗を流す宗介を、かなめは冷たい目で一瞥した。
「だが、あんな気持ちにはならなかったと思う」
「あんなって何よ?」
 服の裾をくいっくいっと引っ張って「おふろー」とマイペースに主張する子どもを抱き上げながら問い返す妻の声は果てしなく冷たい。
「その……君に目を覚まして欲しくなかった……」
 宗介は子どもを抱いて背を向ける妻に一歩近づいた。
「ふーん…。卑怯者のあんたらしいわね」
 宗介は、伸ばさなくても、手を上げれば彼女の肩に触れられる位置まで近づいた。
「そう、だな…。君がそうやって怒るのではないかと怖かった。君に嫌われるのが怖かったんだ……。だから、君が温かくなったらすぐ離したんだぞ?……だが」
 宗介は一度言葉を切って、子どもを産んでも変わらぬ華奢な妻の後ろ姿を目を細めて見つめた。
 やわらかくて心地好い素肌に初めて触れたあの時……。
「本当は、もっとずっと君に触れていたかった。――君が許してくれれば」
 そんな気持ちは、昔も今も君にしか持ったことはない。
 と、宗介は彼女に触れないまま、耳元で言った。
「おかーさん、お顔がまたあかいよ?」
 昔から少しも変わらない真摯な夫の声を黙って聞いていたかなめの腕の中で、これまた父親そっくりに要らないことを口に出す子どもが指摘する。
 かなめは腕の中の子どもの額を、ペちっと指先で小突いた。
 思わぬ援護射撃に、もう一息とばかり宗介は妻の肩に手を掛ける。
「あの頃のことで君がそんなに怒るとは思わなかった。あの時は、確かに君に触れる許可は得ていなかったが、今はもう、触れるだけでなく性交渉も当たり前に…ぐがっ!!」
 いきなり顔面に裏拳を叩き込まれた。
「…痛いじゃないか」
「やっかましい!子どもの前で、んな言葉使うなー!!」
「……夫婦なのだから、していて当然だろう?」
「教育の問題よ!キョーイクのっ!」
「おふろー」
 かなめは、空気を読まずに自己主張を続ける子どもを、ずいっと宗介に付き出した。
「なんだ?」
 子どもを受け取りながら、宗介は赤い顔の妻に首を傾げて問うた。
「今日はソースケが入れて」
「……君は一緒に入らんのか?」
「おかーさんは~?」
 異口同音に聞く父子に、かなめは強く言い放った。
「今日はっ、あんたたち二人で入んなさい!」
 反論を許さずクルッと後ろを向くと、
「むう?」
「むー?」
 同じ調子で音程だけ違ううなり声が背中から聞こえる。
 とりつく島もない妻の後ろ姿にため息混じりのあきらめ声が子どもに話しかけた。
「……仕方ない。では、今日は二人で風呂だ」
「いつもいっしょなのに、つまんないんねー」
「明日には機嫌を直してくれるだろう。……たぶん」
 自信なざげに付け加えた父親の腕の中で、子どもは目をくりくりさせている。
「ねえねえ、おとーさん。おかーさん、なんでおこってるのー?」
「お母さんは、昔から気むずかしいのだ。何かと言うとすぐ怒る」
「あんたが鈍いだけでしょーが!あんたが!!」
 妻の怒鳴り声にビクッと身を竦め、子どもを抱いた夫はそそくさと逃げるように浴室に消えた。
「まったくもう!」
 独りごちて、かなめはまだ熱い頬を両手で押さえた。
 知らなかった。―知らなかった。――あの頃、ソースケの気持ちなんて、全然知らなかった。
 あんなふうに不器用で一途で真っ直ぐな想いを向けてくれていたソースケが、あの時、どんなふうに自分に触れたのだろう。
 きっと、それは、ただただ優しい抱擁で――。
 想像したら、胸の奥がきゅっと苦しくなった。
(なんで、今さら、こんな気持ちになんなきゃならないのよー!?)
 あの頃言ってくれなかった罰に、明日も、お風呂別にしてやろうかしら?
 一人でジタバタもがいた悔しさから、かなめは八つ当たり気味にそう考えた。

 かなめが、なんとなく気恥ずかしい気分で一人で風呂に入って上がってみると、宗介が子どもを寝かしつけていた。
「…寝た?」
「ああ。今、眠ったところだ」
「そう…」
 短く応えて、かなめは自分の寝床に潜り込む。
 宗介が同じように隣に潜り込んできたので、寝床の中で彼に背を向けると、ややあって、宗介の腕が後ろからそうっと回されてきた。
 そのままじっとしていると、背中の彼の体温が近づいてきて耳元で低い声に名を呼ばれた。
「なに?」
「そろそろ、もう一人子どもが居ても良いと思うのだが…」
 どうだ?と問う宗介の腕は、力強く包み込むように優しいのに、どこか縋るような面持ちを残している。――それは、初めて彼に触れることを許した時から結婚した今も、ずっと変わらない。
 きっと、意識のない自分を温めようとしたときも、こうだったのだろう。
 かなめは目を閉じて、返事の代わりに胸元に回された宗介の腕を手の平で撫でた。

 数日後――。
「あんたってば、どーしてっ、そう余計なコトを教えるのー!?」
「余計なことではない。俺は事実を有りのまま教えただけだ!」
「何も全部言うことないのよ!全部!」
「む?それはいかんぞ。都合の悪い部分だけを隠して教えるのは、事実を隠蔽するよりも物事を歪めるものだ。事実は事実としてきちんと教えるべきだ」
「子どもの年を考えて言いなさい!どーすんのよ!?あの子ってば、あの子ってば…!
『けっこんするまえに、おとーさんが、ねてるあいだに、はだかのおかーさんを、だっこしてあっためてあげたら、おかーさんはへんなことしたってゆって、おこって、おふろいっしょにはいってくれなかったんだー』
 ……とか、公園でおっきな声で言っちゃったのよ!?」
「……別に特段おかしなことは言っていないと思うのだが」
「言ってるでしょーが!」
 さして気にする素振りのない夫を、妻はげしげし蹴り飛ばした。
「痛い。痛いぞ」
「あたしがっ!どんだけ恥ずかしかったか分かる?え!?分かんないでしょーが!このトーヘンボク!くぬ、くぬ!!」
 かなめは真っ赤な顔で、げしげし夫を蹴り続けた。
 なにしろ、続けて子どもは、こうも言ってしまったのだ。
『おとーさんが、おかーさんとおふろはいれなくて、とってもガッカリしてたから、なぐさめてあげたら、こどもとはいいものだなって、おとーさんがいうから、きょーだいがいたら、もっといいよっておしえてあげたのー。おとーさん、がんばって、きょーだいつくるっていったのー。まいにち、がんばるんだって。はやくきょーだいふえないかな~』

 およそ十ヶ月後、一家の家族が一人増えたという。



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